氷の国21

【昌磨からの手紙】4　★ ページ30

「あっ、ゆづくん！」

すると突然さっとんが叫んだので、何事かと振り向くと、手紙を指差して、縦に読んでください！といつもとは違う大きな声を出した。

「縦に…？」

再びテーブルに置いて、言われた通り縦読みしてみると…。




たった今
すべてのことが解決しました。
けっこう迷惑かけ
てごめんね。




「たす…けて？」

「助けて！」

はっとして、さっとんと顔を見合わせる。

「これって、昌磨くんからの秘密のメッセージじゃないですか…。」

「そうだわ…絶対そう。」

さっきまでのぐだぐだした気持ちとは反対に、突如として心臓をきゅっと掴まれたような深刻な空気に変わる。

…つまりこの手紙は、自分がピンチだということを周りにばれないよう、こっそり俺に伝えるために出したものだと考えるのが妥当だろう。

「ゆづくん、昌磨くんは助けを求めています…。」

「何らかの理由で戻りたくても戻れないってことか…。」

「きっとそうです。」

手紙の本当の意味が分かったら一気に状況が変わった。
こんな短い文章に意味があるのなら、当然この隅に描いてあるコウモリだって…。

「フェイを呼べってこと…。」

人差し指で下手な絵をとんとんと指差す。

「フェイ？」

「あ、コウモリさんの名前。」

きっとフェイをよこして俺と連絡をとろうとしてるのだろう。

「ゆづくん、コウモリのフェイさんに、様子を見てきてもらうことは可能ですか。」

「うん、いける。…さっとん。あとは俺に任せて？絶対昌磨を助けるから。」

ここからは俺の管轄だろう。
なんとしても昌磨と連絡を取って、一体何が起こっているのか把握しないといけない。

「自分は何をすれば…。」

「そうだな…とにかく待ってて。昌磨の状況が全く分かんないから、情報収集して、それから考える。」

国と国の問題に発展しないよう、上手く立ち振舞わなければならない。
ここは慎重かつ冷静に…。

「ゆづくん…よろしくお願いします。」

またさっとんがぺこっと頭を下げて。
今はそんな小さな身体が、より小さく見えた。






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