氷の国21

【三番目の意味】1　★ ページ23

★ゆづサイド

「昌磨さまがこの国へ移住を？」

「そーなの。もう絶対揉めるわ〜。」

自室でAと二人、テーブルに向い合わせに座って、せっせと羽のパーツを作りながら、昌磨の爆弾発言を振り返る。

「それは大変な決断ですね…。」

「つか、実現するかどうかも怪しいけどね。」

第一、王族が他国の人間になるなんて、そんな話聞いたことがない。
亡命でもあるまいし、実際の所、許可が降りる可能性の方が低いと俺は思っているのだが…。

「でも待ってください。」

「ん？」

Aがふと手を止めて、何かを思い出したように俺を見つめる。

「昌磨さまが氷の国の人間になるということは、知子さんとの身分の壁がなくなるということなのでは…。」

そして、さっとんとの関係について言及するのだが、そもそも眠りの国から逃げ出した一番の原因はそこなんだよな。

「その話もさぁ、なーんか昌磨、結婚自体に興味ないみたいなんだよね。」

「そうなのですか？」

「うん。さっとんとは仲良くしてるみたいだけど、恋人とかはどうかな〜。」

さっとんの家の近くの宿屋を利用してるのだって、あの様子ではただ単に頼る相手が他に思い付かなかっただけのような印象を受ける。

「それはまだお若いからではないですか？もう何年かすれば、ご結婚も視野に入れるはずです。」

「だといいけど。」

「恋愛は人それぞれ、スピードが違いますから。」

接着剤でラインストーンをくっつけた羽を、出来上がった物と一緒に袋に入れながらしみじみと言うAを見ていると、ふと自分たちの時はどうだったかな、とそう昔ではない記憶をたどる。

出会ってからは、比較的早く深い関係になったと言えばそうかもしれないけど、やっぱりスケート大会が二人の仲を大きく変えたような気がする。

優勝していなければ、あんな情熱的な気持ちにはならなかっただろうし、反対に悔しくて一晩中泣いてたかもしれない。

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