氷の国21

【贈り物】4　☆ ページ10

「こんなの見たことないわ〜、キウイの香りだって。」

蓋を開けてくんくんと嗅いでいる側で、私の方にも香ってくるにおいに、懐かしさでいっぱいになる。

「甘酸っぱくて美味しそうですよね。」

「俺今日使ってみよ。」

そう言って緑色のボトルを箱のすみによけたら、底の方にちらっと赤い箱が見えたので、すかさず取り出してみる。

「今度は何？」

「これは…チョコレート…？」

しかも１０枚入りで、薄いファイルみたいなものが一緒に入っている。

「チョコレート食べろってこと？」

「食べ過ぎはいけませんけど、リラックスしなさいということかも。」

「じゃあこれは？」

ゆづ王子がおもむろにファイルを手にした。
なんだかおまけのようだけど、そこにはマフラーをした女の子が笑っている絵が描いてある。

「あ、ゆづきちゃん。」

「ゆづきちゃん？」

「太陽の国のアイドルなんです。」

ふ〜ん。と、ゆづ王子が特に興味はなさそうに、裏返しにしたりしている。

「ショートカットなんだ…。」

「ちょっと勝ち気で、赤いリボンがトレードマークのかわいい女の子…あ、どことなくゆづさんに似てますね。」

「似てねーって。」

そして好みのタイプではないのか、ぽいっとテーブルに投げた。
太陽の国では大人気で、歌もすごく上手なのに。

私もゆづきちゃんの特製マドラーが欲しくて、たくさんアイスクリームを買ったっけ。
…当たらなかったけど。

「かわいいです。」

「はいはい。じゃあ、これは？」

ゆづ王子がビニールに包まれた平べったい物を手に取った。
私が受け取って中身を出すと、乾燥した植物の様なものが出てくる。

「これ…。」

ひょろっと細長いのが１０株くらいある。
水で戻すのかな？と思っていると、不意にゆづ王子が声をあげた。

「あ！にがうり草じゃない？！」

え！これが？
私は直接見たことはないので分からないけど、医務室で少し治療に立ち合った王子さまなら知っててもおかしくない。

「本当に？にがうり草…。」

「ネイサンが持ってたやつとおんなじだ。」

ゆづ王子がまじまじと見ている傍らで、数ヶ月前、私が太陽の国に出した手紙のことを思い出す。

実はダメ元で、にがうり草をもらえないかと書いたのだけど、まさかこんなにたくさん送ってくれるなんて…。

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