【公開練習】4 ★ ページ42
「では失礼して、先にリンクへ参ります。」
「頑張って。俺も後から行くわ。」
頭をぺこりと下げて、リンクに続く通路へと消えた無良くんの背中を何気なく見つめていると、ずっと黙ったままだったまっちーが、ふっと笑って呟いた。
「無良からの宣戦布告ですね。」
「…へ?」
宣戦布告…。
「今日の公開練習が楽しみです。」
「ちょ、それって…。」
そんなことを言われて思い当たるのはただ一つ。
まさか彼はまだAのことを想ってるのか…。
「少なからず想いを寄せていた相手が身ごもったとなれば、これは精神的ダメージが大きいですよね。」
「……。」
想うのは自由ですからね。とまっちーが俺にしか聞こえないように言う。
そ、そうなのか。
二人の関係は絶ち切ったつもりだったけど、片想い的な心のベクトルだけはどうにも出来ないということ?
…でもAにそんな気がさらさらないのは知ってるし、無良くんだけが想っててもしょうがないって言うか…。
いや、恋愛は理屈じゃねぇぞ。
片想いでもいいから、せめてスケートでAにかっこいいとこ見せたいって思ってるのかも…。
無良くんのジャンプはでかいし、ハマればそれなりに出来映えも良い。
男子スケーターの中では珍しく、同性のファンが多いのも特徴だ。
「……。」
「おや、闘志みなぎってますね。」
ふと、俺の燃えたぎる闘争心に気付いたまっちーがリンクへ向かうために上着を脱いだ。
「やってやる…。」
俺も同じく、ジャージの襟を口で咥えて片手でジッパーを下ろし、裏返しに上着を脱いで投げ置く。
そして太ももや腕をぱしっと叩いて気合いを入れた。
もし本当に無良くんがスケートで俺に挑んでくるのなら、それを完膚なきまでに返り討ちにしなきゃ。
「楽しい公開練習になりそうですね。」
「……。」
まっちーの含み笑いを横目に、無言でリンクへと向かう。
みてろ?
公開練習とはいえ、誰にも出来ない入り方と出来映えでジャンプ跳んでやるかんな。
これは俺の意地だ。
無良くんがその気なら、いいさ。ぜってー負けねぇ。受けて立ってやる!
俺はさっきまでとは違う、強い気持ちでバックヤードを後にした。
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鹿(プロフ) - みなみさん» どうなるんでしょう?!フリーどうなるんでしょうか!昨日はなかなか寝付けず、今日は遅めに起きました^^;朝のニュース、ずっとイチローさんで、ちょっとがっかり!? (2019年3月23日 8時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - サルコウが…サルコウがぁぁぁ…!点差が大きいな…。一面に書かれる言葉を気にしていたゆづだけど、全部イチローさんに持っていかれましたね。やっぱりイチロー引退には勝てないよね。そうか、イチローが引退か…。野球ファンでなくとも、結構おおきいな、これは。 (2019年3月22日 8時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 以前より、声が良くなった気がします^^そうとう使ってるなと思ったんですが…。(絶対家で歌いまくってると思われ)早く日本に帰ってこないかなー! (2019年3月18日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» すごい!現地観戦だなんて!楽しんで応援してくださいね^^帰国はまだかなー。ニュースも目が離せないですね! (2019年3月18日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - あっちもこっちも見るところがいっぱいあって、王子はやきもちやいちゃいますね。雪肌精のCM、素敵ですね。芝居の台詞はダメでも、ナレーションは心地よい声で向いてる気がします。引退後はあちこちから引っ張りだこでしょうね。 (2019年3月17日 19時) (レス) id: 42f93678ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2019年2月15日 20時