氷の国20

【仲良いの？】4　☆ ページ4

あの時はそれを受けるつもりなどなかったとはいえ、掃除や食事の用意など、普段経験できない事をしてとても新鮮だったのは覚えている。

それが楽しそうに見えたのだとしたら…。この少年はなんて敏感なんだろう。

でもここはちゃんと誤解をとかなきゃ。
あの時私が無良さんではなくゆづ王子を選んだことが、最初から自分の意思だったことを伝えなきゃ。

「私は王子さまと一緒にいられることが一番幸せだよ？」

「じゃあなんで王子さまは王女さまに優しくないの？馬車が着いた時、俺ずっと物陰から見てたけど、ほとんど目も合わせてないよね。」

それは馬車の中でシロのことがあったからだ。
でもそんなこと言えないし…。

「確かにこの村でゆっくりお話はしてないけど、王子さまはただ王子さまらしく振る舞っているだけよ。あまりべたべたくっついてるのも変でしょ？」

言葉を選びながら、ＴＰＯをわきまえた行動は大人のたしなみなのだと、なんとか分かってもらえるように話す。
でも私は少年から返ってきたセリフに唖然としてしまった。

「これだから大人はすぐ離婚するんだよ…。」

へ？！

「り、りこ…？」

「人前で仲良くしたらダメなの？恥ずかしいの？国の偉い人こそ、そういうの無しにしてお手本にならなきゃだめなんじゃないの。」

「……。」

なかなか的を得た発言に、返す言葉が見つからない。
恋愛に興味があるお年頃なのだろうか…。でもだからと言って、王族が人前で出来ることはそれほど多くはない。

「王子さまってちょっと奥手っぽいもんな〜…。」

しかも奥手だなんて…。この子の中での王子さまのイメージって一体どうなっているのか…。
でも私しか知らないゆづ王子だってたくさんあるのだ。

「とにかく、夫婦の事は本人たちにしか分からないことなのよ。」

子供に伝わるだろうかと思いつつも、分かって貰おうと必死に説明していると、不意にこの鉱石に囲まれた部屋の入り口辺りで、ごろんと質量のある石が転がる音がした。

「何今の。」

「……。」

ほぼ無音の空間に、その音がやけにはっきり耳に届いたなと思ったら、今度は砂が流れるようなザーッとした音が同じ方向から聞こえてくる。

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