氷の国20

【翡翠と珊瑚】2　★ ページ25

「ゆづ見てー。佳菜のはちょっとスカートが短くて、Aはロングなの。」

かわいいでしょ？と不意に佳菜がファッションショーのようにくるっと回って見せる。
自分が着ている翡翠色と似たようなデザインでも、珊瑚のようなピンク色の衣装は、二人ともがお揃いのようだ。

「馬子にも衣装。」

「なんですって？！」

こっちはまだまだ元気印がお似合いだなと、ちょっと冗談を言ったらすぐさま右手が飛んで来た。

「痛っ！」

そして羽がある俺の背中にクリーンヒットする。

「ふーんだ。自業自得。」

「せっかく綺麗に着付けてもらったのに…。」

王子をひっぱたく正室なんていねーぞ、と口に出さずに心の中で文句を言う間に、慌てふためいた使用人が、さっと俺の衣装を整えてくれる。

「王子さま、その衣装とても良くお似合いですね。」

そんな中、いつもの事だからもう慣れたのか、Aが何事も無かったように俺の側へ近寄ってきて、まじまじと翡翠色の衣装を観察し出した。

「なかなか着ないデザインと色味だから新鮮かな。」

つか本当に服が好きなんだな。
普段、黒ばかり着ているからか、いつもと違うだけで目付きが変わって見える。

「ここは透け素材…。」

「あ、描いてもらってる間、しんどくなったら言って。すぐ休憩とるから。」

「はい。」

ちなみに村から戻ってきて今日で二週間。相変わらずお腹の皇子は順調のようで、Aも問題なく過ごせていて嬉しい限りだ。

それにやっと今日の午後、国から正式にAの懐妊を報告が出来ることになり、その喜びもあって、俺はさっきからにやにやが止まらないのだ。

「王子さま、本日肖像画を担当する絵師です。」

「あ、ご苦労。」

そんな中、まっちーが初老の男性を連れてきた。

「今回はこのような名誉をいただき、誠に光栄に存じます。」

頭を深々と下げて顔を上げたら、隣のAが、あっ。と声をあげる。
それはこの絵師が、以前城下で高志郎がAの肖像画を描かせた人物だったからだ。

「今日は正真正銘、国からの依頼だから安心して描いて。」

「ありがたきお言葉です、王子さま。」

そう言って再び頭を下げられる。

あの絵は今も執務室に飾ってあって、自分自身とても気に入っているので、前々から是非彼に肖像画を描いて欲しいと思っていた。

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