氷の国20

【心配】8　☆ ページ15

「あの…。お姉ちゃんのこと…好き？」

ふぁっ？！
今すごく変な声が出そうになって、慌てて口を押さえる。

これにはゆづ王子も苦笑い…と言いたい所だけど、私の反応とは逆に、落ち着いた様子でその質問を掘り下げた。

「なんでそんなこと聞くのかな？」

そのまま中腰になって、子供目線にしながら可愛く小首を傾げて尋ねる。

「だって、村に来たと時はそっけなかったのに、洞窟では優しかったりさ。」

よく分かんないんだよね。と少年が肩をすくめた。
でもこの発言は王子さまに対してあまりに失礼なので、私は少年に軽く意見する。

「個人的な感情は慎んで。…もう診察室に入った方がいいわ。」

早く医者に診てもらうよう肩に手を置いて急かす。
でなきゃもっと失礼なことを言いそうだと思ったから。

でもその予感は見事に的中する。

「みんなが言うように、正室の佳菜子さまの方が好きなの？」

「え？」

わぁ！爆弾だ…。
この手の質問はご本人が一番嫌う部類なのに。

このまま好き放題言わせていたら、例え子供でも阿修羅モードのゆづ王子と対面することになってしまうかもしれない。
それだけはなんもしても止めなきゃと、一人ハラハラしていると…。

「うーん…、その解釈は良くないなぁ。」

王子さまが腕を組みつつ首を何度も傾げながら、大人の対応でやり過ごした。

これセーフなのかな…でもこれ以上よけいなことを言わない内に、さっさとここから立ち去った方がよさそうだ。

「あの…。」

ゆづ王子に声をかけようとしたその時、私の願いも虚しく、少年からさらに上をゆく発言が飛び出した。

「もしそんなに好きじゃないならさ、無良の兄ちゃんにお姉ちゃんを譲ってよ。」

ほわぁ！な、なんてことを！！
洞窟の中でも何か言っていたけど、まさかご本人を前にしてこんなふざけたことを言い出すなんて。

「王子さま！子供の戯言ですので…！」

私はゆづ王子に視線を向けて、今度こそ少年の口を手で押さえながら、なんとか取り合わないよう告げる。
ここで無良さんの名前なんて出したら、過去のことでいらぬ誤解を与えてしまうとも限らないからだ。

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