氷の国20

【心配】6　☆ ページ13

☆主人公サイド

子供たちとの公務を途中で切り上げて少し休ませてもらう間、隣村の医者だという人物に診察を受ける。

一緒に閉じ止められた少年を先に診てもらうよう頼んだのだけど、そこはどうしてもゆづ王子がうんと言わず、私から診察を受けることになったのだ。

部外者の立ち入りを禁止している中で、黙っているわけにもいかないので、医師にだけは懐妊していることを伝えた。
当然の如くとても驚かれたけど、そこはしっかり口止めをしておく。

「王女さまを診察するなど、身に余る光栄でございます…。」

深く頭を下げられて、こっちが恐縮してしまう。

「ほんっとに、よーく診てね。」

何度も念入りに言うゆづ王子の姿に苦笑いしつつ、椅子に座ったまま右腕をまくる。
ちなみに医者は少し高齢の男性で、優しそうなおじいさんという感じだ。

「あの…王子さまの公務はよろしいのですか？」

こうして付き添ってくれるのは嬉しいのだけど、今後のスケジュールに差し支えるのではと心配になって尋ねる。

「いいの。Aのことが気になりすぎて集中できないから。」

そう言いながら、部屋にあった椅子を私の側まで移動させて、どかっと座った。

そんなゆづ王子の行動を微笑ましく思うと同時に、こんなにも私と皇子のことを想ってくださっていることに嬉しくなる。

「どれ、王女さま。お手を失礼いたします…。」

医者がゆっくりと私の腕をとると、無意識に不安が押し寄せる。

お腹の子は大丈夫だろうか…。
無理をしたつもりはないけど、寒さや閉鎖的な空間にいたせいで、精神的に少し参っていたかもしれない。

脈をはかる静かな時間が流れる中、途中首や目を触診されてだんだん気持ちが落ち着いてゆくと、医者が再び、とくとくと流れる血潮を念入りに指で確かめながら、ふむ…。と息を吐いた。

「……。」

そして私の腕を解放して、王子さまの方を向きながら告げる。

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