氷の国19

【夢の中】6　★ ページ6

「ねぇオリジン…魔界の王で良かったなって思ったことある？」

今度は自分から質問してみる。規模は違えど、同じ国を治める立場として、日々どんなことを思って生きているのか聞いてみたかったのだ。


“人間の分際で私に質問するのか…”


「いいじゃん、教えて…。」

普段こんなことをあまり相談できる相手もいない中で、オリジンの人となりを絡めて尋ねてみる。
すると…。


“一度もない…”


少し寂しい答えが返ってきた。

「そうなんだ…。じゃあこれから一つくらい見つけなよ、そしたら何か変わるよ…。」


“……”


「かわいい奥さんもらうとかさ、いいんじゃない？」

自分がそうだったように…。
きっかけとして、環境を変えるのは決して悪いことじゃない。


“…残念だが私には既に…孫がいる…”


オリジンが、あまり残念じゃなさそうに返事をする。
…まじか。魔物ってある意味年齢不詳だわ。

「そうなの…。俺にも今度子供が生まれる予定なんだよ…。」


“氷の国の皇子か…”


「うん…。ずっと待ってたから。国の皆もきっと喜んでくれると思う。だからそろそろ帰って奥さん労いたいんだけど。」

そうだ、早くAに感謝の言葉を伝えなきゃ。
そしていっぱいハグして、これからのことをたくさん話したい。

男の子かな、女の子かな…。名前はどんなのがいいかなって、生まれるまでの時間でさえ幸せに過ごしたいんだ…。

そんな事を想像しつつ一瞬肩の力を抜いたら、突然オリジンが大声で笑いだした。


“ははは！！お前は面白い男だな…結弦……答えによってはニジンスキーごと消してやろうかと思ったが……”


今一瞬怖いことを言われたけど、驚く間もなく言葉が続く。


“今回は見逃してやろう…”


魔界の王らしくない、とても優しい声で。

「……。」

それは王としての判断なのか、それとも個人的なものなのか…。それを尋ねようとしたら…。


“さらばだ…私に良く似た青年…”


俺が再び話しかける前に、どこかへ消えてしまった。






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