氷の国19

【対立】4　★ ページ31

「ねぇ、せっかくだから肖像画載せない？」

「肖像画、ですか？」

ふと思い付いたように、まっちーに告げる。

今まで一枚もAの肖像画を載せて…いや、描かせてなかったので、そろそろきちんと形にしなきゃダメかなと思ったのだ。

俺とAも親になるし、高志郎が勝手に制作したものじゃなく、ここは節目として肖像画を残すにふさわしい時期なのではないだろうか。

衣装だって新しく用意して、国民に改めてAを紹介するつもりで、仲良くツーショットなんていいかも。

「俺とAが並んだやつとかどう？」

何の気なしに言うと、まっちーが怪訝な顔をした。

「佳菜子さまはよろしいのですか。」

「へ？」

佳菜…。

「ですから、正室であらせられる佳菜子さまは、共に並ばないのですか。」

「……。」

言われたことを理解するために、唇に指をあててしばし考える。

そっか…。子供を生むのはAだけど、それだけを全面に出すと、国民に佳菜の存在を軽く扱っているような印象を与えかねないな。

下手したらまた、世継ぎは佳菜に…なんて思想が出てくるかもしれない。

将来、王妃になるのは佳菜だけど、ここは分け隔てなく俺を真ん中にして二人に入ってもらう方がいいか。

「個人的な肖像画ならまだしも、国民に向けるものですから…。」

まっちーからの再三の意見に、俺は素直に耳を傾ける。

「そうだわ。まっちーの言うとおり、ここは三人で一枚の肖像画にしてもらお。」

Aの肖像画はまた時期を見て、子供が生まれる前にでも描いてもらおう。

「それがよろしいかと。」

「あ、子供が生まれたらすぐに一枚描いてもらう準備しといて。」

そうだ、成長の第一歩として、まずは生まれたての我が子を残さなきゃ！

「しばらく絵師には、お城に常駐してもらう必要がありそうですね。」

「そうね、専用の部屋を一つ用意しておいてね。」

できるだけたくさんの肖像画を残したいし、太陽の国へも幾つか送って…。

「すでに親バカですか。」

「ふふ、そうですが何か。」

まっちーの嫌味もなんのその。
子供が生まれるということは、それ自体が春そのものかもしれないなと、優しい気持ちでいっぱいになった。







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