氷の国19

【対立】3　★ ページ30

★ゆづサイド

ジョニーと衣装の打ち合わせをした後、再び執務室でまっちーと仕事を再開する。

イベント続きだったので、こうしてまた色んな仕事をするのがとても久しぶりだなと思いつつ席につくと…。

「王子さま。太陽の国への書簡は王子さま直筆でお願いいたしますね。」

不意にまっちーが紙とペンを持ってきたので、 あっ、と小さく声をあげる。

「そっか。Aが懐妊したこと、太陽の国に知らせなきゃだ。」

「左様です。」

まっちーが優しい笑顔で返事をする。

Aがこの国へ嫁いでから幾月も経つ中で、途中、高志郎を様子見に寄越したくらいだから、Aの側室としての立場については、それなりに心配な部分もあるだろう。

ここは、子供が出来たことをいち早く伝えなきゃいけないし、万が一これから先、子供にもしものことがあっても、懐妊したことは事実なのだから、ご両親にはありのままお伝えするべきだ。

「後で書くよ。そうだな…書簡は二通分用意するから。」

「二通…ですか？」

「うん、一通は王さまと王妃さま宛で、もう一通は高志郎宛。」

心配性の高志郎に変わらず幸せに暮らしていることを伝えたいし、リンクの事もどこまで進んでいるのか直接やりとりしたいなって思っていた。

「分かりました。ではこちらに一式ご用意しておりますので、今週中にお書きください。」

「了解でーす。」

一応内容はAの意見も聞いてみてから書くことにしよう。ご両親に伝えたいことだってあるだろうし。

さて、そろそろ上がってきた資料に目を通そうかと、一枚机に広げ置くと…。

「それはさておき、王子さま。」

まっちーがさっきの流れのままに話しかけてきた。

「ん、何？」

「お城便りに掲載するインタビューの依頼が来ております。」

「あぁ、もうそんな時期か〜。」

毎年この時期のお城便りは、シーズン前の意気込みをインタビューされるんだった。
去年はその後にAとの婚儀が決まって、ばたばたしてたんだっけ。

「また日にちが決まり次第、お願いいたします。」

「うん。その頃には子供のことも言えるね。」

「えぇ。とても幸せに満ちたお城便りになるでしょう。」

二人で顔を見合わせつつ、自然と笑顔になる。

みんなびっくりするだろうな。
もう世継ぎとか関係なく、子供ができたことで、Aの存在が皆に完全に認められるだろう。

氷の国の人間として、俺の妻として。
これからも立派に勤めをはたしてくれるに違いない。

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