氷の国19

【真夜中の願い】 6　★ ページ12

「お前、なんで…。」

昨日まで普通の人間と同じくらいでかかったのに…。

良くみると小さいながらもちゃんと翼も付いていて、サイズ的にはフェイとあまり変わらないように見える。


“契約の元に…馳せ参じた…”


そのままいきなり膝まずいて、昨日までとはうってかわってすごく低姿勢に話し出すので、妙な気分になる。

「あの、これは一体…。」

Aも訳が分からない様子で戸惑っているが、それは自分も同じ気持ちなので、早速こちらから質問する。

「ちょっと聞くけどさ…。」


“なんなりと…”


「なんで俺の背中に羽が生えてんの。」

ニジンスキーのサイズも気になるけど、まずは突如生えたこの黒い翼だ。
こいつと関係ありそうだし、こんな姿のまま、お城の皆と会うわけにはいかない。


“契約の証だ…関係が成立した日の午前０時から…主であるお前の背に現れるのだ…”


「え！聞いてないんだけど。」

つか、いきなりそんなことを言われてもどうすれば良いのかわかんねー。


“それは空を飛ぶ機能があるわけではない…お前と僕を繋ぐ…いわば生命線のようなものだ…”


「生命線…。」


“よって…他の第三者には見えないようになっているし…触れることも出来ない…”


ニジンスキーの話によると、しもべとして生きる間、自分の羽を俺にあずけているようなものらしい。
そうすることによって、主従関係を結んだ、ということだろうか。

「待ってください。他人に見えないのなら、なぜ私にははっきり見えるのですか…？」

説明を聞く中で、Aが当然の質問をする。
確かにこの翼に最初に気付いたのは紛れもなくAだった。

その答えを知りたくて、手のひらの上のニジンスキーを見ると、すっとAを指差しながらこう言った。


“それは…その女がお前の細胞を体内に持っているからだ…”


俺の細胞…。

「あ、まさか子供？！」

確かにAのお腹の中にいる子は、言い方を変えれば俺とAの細胞だ。

この子を媒体としているから、さも今、Aにだけは俺の背中の羽が見えてるということか…。

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