氷の国19

【夢の中】4　★ ページ4

★ゆづサイド

ぼーっとする意識の中で、ふわふわと浮いているような不思議な感覚が身体を包む。

これ夢かな…。

きっとそうだと勝手に納得しつつ、再び意識を手放そうとしたら、不意に誰かに呼ばれた気がして脳だけ覚醒させる。

それでも、気のせいかと思いつつしばらくじっとしていると…。


“お前か…ニジンスキーをしもべにしたのは…”


今度ははっきりと、あきらかにニジンスキーとは違う男性の声が聞こえた。

「誰…。」

つか、ここは俺の夢の中なのになんだよ…。
外から強引に入って来られたような気恥ずかしさに戸惑う。


“私はオリジン……魔界の王だ…”


オリジン…？
しかも魔界の王なんて…。現実的にあり得ない人物の出現に、嘘だろと思う。

「その魔界の王が、俺に何の用なの…。」

そしてまどろむ意識の中、なんとか返事をする。


“なぁに…あのニジンスキーをしもべにしたヤツが一体どんな人物なのか見にきてやったのさ…”


なんだ、ただの野次馬かよ…。

「あいにくだけど、普通の人間だし…。」

声だけ聞きながら会話する中で、ようやく少し覚醒する。

自分は王子だけど、スケーターでプルオタで…。若干２４才の健全な男だ。何も特別なものは持っていない。


“その割に…たくさんの守護に見守られているじゃないか…”


守護…。それってフェイと刑事のことか。
何でもお見通しだなと思いつつ、姿が見えない中で、本当ににただの興味本位で会いにきたみたいに言われて、見せもんじゃねーぞと内心毒づく。

「あんたさ…。」


“オリジンだ”


そして呼び方さえもダメ出しされてしまう。

「…じゃあオリジン、勝手に人の心に入ってくるのやめてよ。」

気持ちよく眠っていたいのに、邪魔するなと言いたい。


“まぁそう言うな…お前がニジンスキーをしもべとして操れる器かどうか…見極めてやろうと思ってな…”


オリジンがそう言うと、突然周りの空気が揺れて、ゴォッと不安定な大気のような音がした。

これから何か始まるのだろうか。
つか見極めなんて、そんなの頼んでねーって…。


“お前…名前はなんというんだ…”


「羽生結弦…。」

もう色々考えるのが面倒になってきたので素直に答える。

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