【生きたい】8 ☆ ページ47
「あっ!」
すると中から一人ぶんの背中が、もたれる壁がなくなったようにごろんと地面に投げ出される。
その人は無数の黒い羽に覆われて、一見、ニジンスキーさんなのかゆづ王子なのか分からないけど…。
私は早く確かめたくて、フェイさんを片手で抱いたまま割れた卵の側までゆき、膝まずく。
「ゆづさん!!」
「王子…!」
地面に散らばった羽を掻き分けると、穏やかなゆづ王子のお顔が見えたので、頬に手をあてて呼吸があることを確認した後、急いでまっちーさんに指示をする。
「早くお城へ!」
眠っているのか目は閉じられているけど、一刻も早く静香さんに見ていただかないと!
「分かりました。しかしこれは…。」
まっちーさんがゆづ王子の身体に触れながら、磁石の様にしっかりと貼り付いた羽を一枚手に取る。
残念なことに、ここへ来たときに着ていた水色の衣装はもう影も形もなく、真っ黒の羽が衣装の様になっているだけだ。
一体何があったのだろうと、出来る範囲で想像していると、不意にずっと黙ったままだった美姫さんが呟いた。
「オリジン…。」
「え…。」
オリジン…?初めて聞く言葉だなと思いつつ、それが何なのかを尋ねる。
「黒い翼と阿修羅の瞳を持つ、魔界の王だよ。」
それは魔女としての知識だろうか。魔界のことなど何も知らない私たちには全く理解できないけど、魔界の王だなんてあまり良いイメージではない。
「ゆづは人間だよ?魔界の王なんかじゃない。」
「佳菜子さま、今は結弦王子をお城へ連れ帰るのが先決です。美姫さんのお話はその後ゆっくり聞かせていただきましょう。」
ついでにそのコウモリも。と、まっちーさんが一先ず佳菜子さまの話を遮った。
「あ、まっちー。あの狐もいいかな。」
少し離れた場所に、吹き飛ばされて気を失ったままのシロがいるのを、佳菜子さまが指差す。
そうだ、シロも連れて帰らなきゃ。
「分かりました。…王子さまには目覚めてから、一度よくお話をうかがわねばならないようですね。」
そう言って、ゆづ王子を軽々と持ち上げたまっちーさんを、私は複雑な気持ちで眺めていた。
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鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます^^;書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる^^それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ? (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます! たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう! 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです!魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました!とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています^^;このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2018年12月6日 17時