氷の国18

【生きたい】6　★ ページ45

「早くしろ、時間がねぇぞ！」

このままじゃこいつは死ぬ。
それは百歩譲って仕方ないのかもしれないけど、ここから出られずに、共倒れになるのは俺が困る！


“くっそぉ！くっそぉ！！死にたくない！！！”


不意にニジンスキーがやけくそのように叫んで飛び上がる。そして俺の背後に回って、まるでおんぶするように覆い被さってきた。

「くっ！」

その重さに耐えるために、咄嗟に踏ん張る。


“いいか…！これは僕の意思じゃないぞ！魔界のルールでしもべになるんだぞ！”


そんな中、あくまでも自分の意思じゃないみたいに言われて、子供か！と思う。

「分かったっつーの！早くしろ！！」

気の強いやつだ…。
俺のしもべになったら、まずその根性から叩き直してやる。


“お前に…黒い翼を…Ура для происхождения！”


ニジンスキーがお腹の底から絞り出すように叫んだら、続けて何か異国の言葉が耳に届く。
すると次の瞬間、ニジンスキーの身体がガラスが砕け散るように弾けて、そして消えた。

残された無数の黒い羽が、意思を持ったかのように俺の身体に貼り付いていく。

「なんだこれ…羽が…。」

ものの数秒で、もともと着ていたオトナルはニジンスキーの羽で埋め尽くされ、水色から真っ黒な衣装へと変化する。

「カラスじゃねーぞ…。」

俺なら絶対ここに金色を混ぜてやるのに…。

でもこれでニジンスキーがしもべになる選択をしたのは間違いなさそうだ。その証拠に、空間の歪みも徐々に収まってゆく。

それでも身体への負担は相当なもので、だんだんと背中から全身に広がっていく違和感に耐えきれずに、なぜか猛烈な眠気に襲われる…。

そして、ぱりんという音が聞こえたのを最後に、俺は意識を手放した。






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