【誤算】5 ★ ページ38
侮辱か、これ…。
王子である俺に対するこの生意気な行為に、抵抗の意味を込めて思い切り睨みをきかせる。
“怖い目だね…まるでやんちゃな子猫のようだ…”
「言ってろ…噛みつくぞ。」
本当は引っ掻いてやりたかったけど、手も足も自由がきかないからそれは無理だ。
“若くて元気な若者は大いに歓迎するよ…さぁ…その身体を僕に…”
触れられたままの手が、そのまま伸びてきて俺の頭部を鷲掴みにする。
「ぐっ!」
その骨から伝わる感覚に顔を歪めたら、突然、その痛みとは別に、頭を突き抜けるような声が聞こえてきた。
『ゆづ!』
今俺の名前を呼んだのは…フェイ…?
現実か非現実かわからないこの空間で、テレパシーが通じたことにただただ驚く。
“今の声は一体…”
ニジンスキーにもフェイの声が聞こえたのか、不意に掴まれた俺の頭が解放される。
さすが魔物…と感心している場合じゃない。俺はこの瞬間を逃さない手はないと、少しでも時間を稼ぐためにこっちから仕掛けた。
「いっとくけど、俺と同化したらもれなくバンパイア飼うことになるから…。」
ニジンスキーがバンパイアを嫌いかどうかは知らないけど、多少のリスクがあることを示唆しておく。
“バンパイアと契約しているのか…”
「月に二度、血ぃあげなきゃなんねーぞ…。」
こんなことしか思いつかないけど、些細なことでも、今は攻撃の材料として使いたかった。
“ふん…それがどうした…やらなければ済むことだ”
「うわっ!」
だけどニジンスキーは気にすることもなく、逆に、もうしゃべるなと言わんばかりに、今度は俺の喉元を締め付けてくる。
やべ…苦しい…。
『ゆづ!大丈夫なの?!』
返事がまだなのを心配して、フェイが再び交信してくる中で、なんとかニジンスキーに同化させない方法を考えるため、頭をフル回転させる。
『大丈夫…ただ、ピンチなだけ…。』
それと同時に必死に気持ちを集中させて、テレパシーを送る。
考えろ…。このままじゃ本当にニジンスキーの言うままに喰われちまう。
“さぁ…そろそろお前の中に入るとしよう…”
「……。」
不意にニジンスキーの身体がホログラムのように透けた。
そして完全に幽霊のようになった身体を後ろ向きにして、少しずつ俺に重ねてゆく。
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鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます^^;書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる^^それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ? (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます! たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう! 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです!魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました!とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています^^;このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2018年12月6日 17時