【誤算】2 ★ ページ35
その二つが繋がった今、さっきまでとはまるで違うあたたかな感情が己の心を満たしていく。
“困った!困ったぞぉ!!こんなの初めてだぞぉ!この女の命が貰えないのならば…僕はどうすれば…!”
慌てた様子のニジンスキーが、どこからかボロボロの小さな本を取り出して、ぺらぺらと乱雑にめくり始めた。
きっと魔界の法律が載った本なのだろう。かなり使い込まれているようだが…。
「ゆづ、Aは無事なんだね…。それに、皇子を授かったんだね…。」
そんな中、佳菜が地面を這うように近づいてくる。
顔も服も涙とほこりでぐちゃぐちゃだけど、きっと自分も同じような格好だろうからあえて突っ込まない。
「あぁ、ニジンスキーが言うにはそうみたい。」
この場合、Aの命を奪えなかったことが何よりの証拠だろう。
「このタイミングで…ゆづ!もう最高だよ!推せる!」
佳菜に泣きながら誉められるなんて珍しいこともあるんだなと思いつつも、今はひとまず危機を脱したと思っていいのだろうか。
「絶対に大丈夫って信じてた…。」
美姫さんもクワドくんを抱きしめながら安堵している。
俺はもう一度腕の中のAに微笑むと、悪いと思いつつも一旦地面に寝かせて、ニジンスキーと対峙するために立ち上がった。
手放しで喜びたいけど、今はこっちの問題が重要だ。
“ない!どこにもない!!”
本を放り投げて訳の分からない雄叫びを上げている魔物ことニジンスキー。
おそらく他の方法を探したけど見つからなかったのだろう。
そんなニジンスキーを落ち着かせようと、俺は彼の肩に手を置いて、ぐっと体重をかけてから、至近距離で睨むように顔を見つめる。
「おい、ニジンスキー。」
“はっ…!”
「狐のしもべに決定したの。それとも寿命が尽きるの。」
どっち。と完全に阿修羅顔で尋ねる。
Aの命を奪えなかった今、勢いに任せて他の誰かの命を取られても困るし、ニジンスキーが混乱している今のうちに逃げ道を塞がなければいけないと思ったからだ。
“そ…それは…”
「さっきお前、生きたいっつったよな。だったらまず狐のしもべになって生きるのびる方法考えたら?つかもっかい本出せよ。」
幸い、しもべとしての仕え先になりそうな狐は一匹ここにいるので、ちらっと気を失ったままのシロを見つつ、催促するように右手を出す。
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鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます^^;書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる^^それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ? (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます! たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう! 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです!魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました!とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています^^;このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2018年12月6日 17時