【小石一つ分の命】6 ★ ページ33
「ゆづさん、どうか…健やかに…幸せな人生を、お過ごしください…。」
「無理だ！Aのいない人生なんて、なんの価値があるって？」
死の恐怖のあまりに、とても小さな声で唇を震わせながら、俺もまたAにすがりつく。
「大丈夫です…ゆづさんは強い方なので…私などいなくともへーき…。」
「平気じゃない！」
「……。」
「ずっと二人で生きてくって言ったじゃん！俺が愛してるのはAだけ！わかる？！だから…。」
俺が強いなんて、そんなの全部周りが作り上げた偶像だ。
本当は弱くてもろくて、一人じゃ何にも出来なくて…。心だって、過去に何度壊れかけたか知れない。
「…ゆづ、さん。」
力なく足元から崩れるAを抱き止めながら地面に膝をつく。
そしてもう恐怖で気を失ってしまったのか、ぐったりとして俺に身を預けたまま動かなくなってしまった。
「嫌だ！Aの命を奪うくらいなら俺のをやる！Aが…Aがいなくなったら俺は…！！」
取り乱した自分の目から止めどなく涙が流れる。
あとどれくらいで１０分なんだろうか…。それを知るすべがないことも、一層俺をおかしくさせる。
“ルールはルールだから…それは無理だよ…もし今君の命を奪ったら…二番目の人間の命を奪ったことになって…ルール違反をした僕が狐のしもべになってしまう…”
「ニジンスキー、お願いだからAを…助け、て…。」
声にならない声を出して哀願する。
王子という地位もプライドも、全部かなぐり捨てて。こんなこと、もう一生ないであろう醜態を今、魔物に晒している。
なぜなら、こんなことくらいでAが生きていられるのなら、た易いものだと判断したからだ。
“懇情の別れは終わったかな…もうすぐ１０分経つよ…”
でもそれも何の解決にもならず、ニジンスキーの一人舞台のまま時間が過ぎる。
“５…４…３…２…”
カウントダウンが始まって…。
吐きそうなくらいの緊張に襲われて…。
いよいよその時が近づいてきて、再び佳菜が断末魔のように叫んだ。
「Aー！」
“いーち…ゼロ…”
「わあぁぁぁぁ！！！」
ニジンスキーの最後の声と重なるように。
俺もまたAを抱きしめたまま、空へ向かって雄叫びをあげることしか出来なかった。
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鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます＾＾；書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (
レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる＾＾それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ？ (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます！ たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう！ 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです！魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います！ (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました！とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています＾＾；このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鹿
| 作成日時：2018年12月6日 17時
