【小石一つ分の命】5 ★ ページ32
★ゆづサイド
「待って、最初から話し合おう。」
どうにか解決の糸口を見つけようと、時間稼ぎの意味も込めて説得を試みるが、そんな願いもニジンスキーの一言であっけなく砕かれる。
“無駄だよ…もう彼女の命は捕まえた…あと10分すれば…身体ごと僕に吸いとられる”
10分…?!その理不尽なタイムリミットを聞いてふと地面を見ると、ニジンスキーから伸びた光が足かせのようにAを捕らえていた。
「くそっ!!」
それを必死に自分の足で切り離そうとするけれど、光が消える訳もなく、すぐに無駄な努力だと知る。
つかまじか…。
10分後には、本当にAのいない世界になってしまうのか?!
爆発しそうな心臓を服の上から鷲掴みにしたら、すでに号泣している佳菜の側にいたシロが、怒りの形相でニジンスキーに向かって走り出した。
「シロ!」
しかし…。
“狐はあっち行ってろよ…!”
「ギャウッ!!」
噛みつこうとしたようだけど、邪魔だといわんばかりにあっけなく避けられて、今度はニジンスキーの後方に吹き飛ばされた。
「刑…!」
思わず本当の名前を呼びそうになって、慌てて口をつぐむ。
そして刑事は気を失ったのか、倒れたまま動かない。
“やだやだ…無駄な体力使わせないでよ…”
その圧倒的な力の前に、俺はAを力いっぱい抱きしめたまま、もうどうしようもないのかと、一気に負の力が全身を駆け巡る。
負けたくない…。負けたくないけど、どうすれば勝てるのかが分からない。
そしてふと、とても小さな声で自分の名前を呼ばれて気がして、Aの顔をのぞき込む。
「ゆづ王子さま…。せ、せめて最期のお別れを…。」
そしてぎこちなく顔を上げたAと目が合った瞬間、これから起こるであろう現実を一気に突き付けられる。
「何言ってんの…。ぜってー助けるから!」
方法も思い付かないのにどの口が?!と自分の無力さを責めつつも、せめて一秒でも長くAに触れていたくて両手で頬を包む。
「ゆづさん…わたし…私は…。あなたと出会えて…しあわせ、でした…。」
「A…!」
そんな別れの挨拶なんてしないでくれと言いたいのに、もしも本当にAが消えてしまったらと思うと、言葉を止めることができない。
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鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます^^;書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる^^それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ? (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます! たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう! 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです!魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました!とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています^^;このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2018年12月6日 17時