【東へ】4 ★ ページ4
「生まれたんです、コウノトリの雛が。」
「ほんとだ…。」
ぴょこぴょこ動きながら、一生懸命親鳥にエサをねだっている姿がそこにあった。
「無事に生まれて本当に良かったです…。」
「うん…。」
すごい…。あんなにも生命力に満ち溢れてるコウノトリを身近に感じて、何とも言えない幸せな気持ちになる。
そして、やっぱり明るい出来事があると、より一層春という季節が輝いて見えるんだと実感する。
出会い、そして希望。
それら全てをきらきらと照らしてくれているみたいだ。
「名前、付けますか?」
ふとAが俺に寄り添いながら呟いた。
「…いや、巣立ったとき寂しくなるから、やめとく。」
まぁ彼らは野生だし、名前を付けたらペットみたいでなんか違うかなとも思うし。
俺はなんとなく今Aを近くで感じたくて、肩に手を回して抱き寄せた。
「ゆづさんあの…。」
「ん?」
不意にAが何か言いたげに上目遣いで話しかけてきたので、俺はコウノトリから視線をはずして隣に向ける。
すると、今度は残念そうな表情のままうつむいてぽつりと話始めた。
「その、皇子のことなのですが…。」
「……。」
「なかなか、良い報告ができず…。」
そこまで聞いて、すぐにAの唇に人差し指をあてて黙らせる。
「何も言わないで。」
おそらくAはまだ子供ができないことを気にしているのだろう。でもこればっかりは謝るようなことじゃないから。
「……。」
「大丈夫、絶対に大丈夫だよ。」
優しく、不安にさせないように微笑む。
いつか必ず、俺とAの元にも彼らのように幸せが訪れるから。
視察の時、コウノトリが言ったことは夢じゃなかった。だからきっと良いタイミングで授かるはずだ。
「ゆづさん…。」
今はただ、穏やかな気持ちで雛の誕生を祝ってあげたかった。
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鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます^^;書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる^^それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ? (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます! たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう! 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです!魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います! (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました!とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています^^;このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2018年12月6日 17時