【捜索】7 ☆ ページ24
“白い狐か…悪いけど僕の趣味じゃないんだよねぇ…”
ふと彼がぴんと指先を伸ばした両手をゆっくり上にあげて、同じ方向を指すように腕を折り曲げた。
そしてそのままの美しい流れで右手を口元にもってゆき、自らの手のひらに、ふーっと息を吹き掛ける動作をする。
なんだか嫌な予感がするなと思ったら、どこからともなく無数の薔薇の花弁が現れて、一直線にシロへと向かって降り注ぐ。
“あっちへ行っててよ”
その一言で、なんと風の力と共にシロは後ろへ吹き飛ばされてしまった。
「ギャン！」
「シロ！！」
地面を転がってゆくシロ。そして佳菜子さまもこの状況に妙な空気を感じ取ったのか、シロを追いながら美姫さんに声をかける。
「ねぇ、この人怒ってるの？！」
「知らないわよ！でも彼は…、ニジンスキーは狐が大嫌いなの！！」
「ニジンスキー…。」
彼はニジンスキーという名なんだ。
でも今はそんなことを考えている余裕はない。シロは佳菜子さまに任せて、彼がこれ以上無茶しないようにここで見てないと…。
離れているとはいえ、苦手な狐がいることで彼が興奮したら困る。
「白狐なんてどこから紛れ込んだのかしら…。」
「美姫さん、早くクワドくんを見つけてもらって、元の世界へ帰ってもらった方が…。」
私が少し後退りながら伝えると、美姫さんもそれに頷いてニジンスキーさんに向き合う。
「そ、そうね。ニジンスキー、悪いけどクワドくんの居場所を教えてくれないかなー。」
胸の前で手を合わせてお願いしているのを側で見守りつつ、これ以上何事も起こらないよう心の中で祈る。
“願い事か…狐がいて気分悪いけど…それが僕の仕事だからね…”
髪をかきあげながら、いいよ…と返事をくれて、ほっと胸を撫で下ろす。
ここで拒否されたら何のために呼んだのか分からない。
“では…これが今の僕の人生における最後の願いになるけど…良いね…”
「うん。」
ニジンスキーさんがなめらかに身体を動かしながら、さっき聞いた情報を自分自身で確認するように繰り返している。
“ではその願い…引き受けよう…”
一瞬、彼が魔法陣の上で歩くようなポーズをしたまま動きを止めて、次に両手を頭上に上げて、手のひら同士をぴったりと合わせた。
その独特な動きになんとなく釘付けになりながらも、また美しい声が耳に届く。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿(プロフ) - suzuranさん» 最近お話がぽんぽん進んでしまうので、ゆっくり更新したいのですが、ここで止めると怒られそうで、いつもついつい更新してしまいます＾＾；書きたいことがはっきりしている時はたくさん進むんですが、一区切りついてしまうと難しいですね。 (2019年1月2日 20時) (
レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - るりさん» 誰もが羽生さんの幸せを願ってる＾＾それはまだ結婚とかではないのかもしれないけど、いつかは結婚して欲しいなあ〜と思いながら日々書いています。主人公との再会はもう少しあと…かなあ？ (2019年1月2日 20時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
suzuran(プロフ) - あけましておめでとうございます！ たくさんの更新ありがとうございます(^^) ゆっくり気長に4A待ちましょう！ 予想の斜め上を行くお方ですから、今年もたくさん驚かされるんだろうなぁ。 (2019年1月2日 8時) (レス) id: 4f2407ab74 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - あけおめです！魔王に乗っ取られなく一安心。王子と主人公ちゃん再会できてないんですもんね。早く安心できるといいなぁ。更新早くて嬉しいです。寝る前に読むのが楽しみです(^^)/今年も羽生さんにとって幸せになる年になることを願います！ (2019年1月1日 22時) (レス) id: 9a360f115b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 昨年はたくさんのコメントありがとうございました！とても励みになりました。最近オリジン脳になってて、もうアニメキャラのようになっています＾＾；このお話が終わったら…どうしようかな〜〜 (2019年1月1日 15時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鹿
| 作成日時：2018年12月6日 17時
