氷の国16

【パートナー】2　★ ページ47

「ゆづさんの…香り。」

そう慈しむように胸に頬を擦り寄せてくる。

「何かわいいこと言ってんの。そんな好き？俺のこと。」

「はい…、すごく。」

わ…、なんだかめっちゃ従順になってる…。
夕べいじめすぎたかな…。でもこんな変化も…嬉しい。

「ふふ。ちょーかわいいね。」

そしてまた自分もAの髪に頬擦りする。

「ゆづさん…。」

ん？
ふとAが顔を上げて目を閉じた。
あぁ…これはキスしたいんだなってすぐにわかったので、迷わず自分も顔を近づけていく。

「……。」

吸い寄せられるように重なるお互いの唇。
昨日みたいに激しいのじゃなくて、とびきり優しいキスを交わす。

そしてそっと離れた後、ふと思う。

「奥さんいるのによその女の子とハグって良くないか…。」

「ゆづさん…？」

考えてみれば、Aが妬きもちやくのはあたりまえなのかもしれない。
俺だってAが目の前で他の男と抱き合ってたら嫌だし、ずっとこうやって良い関係でい続けるためには、気持ちの面で思いやることも大事だ。

俺は身体を密着させたまま、そっと耳元で呟いた。

「うん。もう女の子とハグするのやめるわ。」

「え。」

「Aだけにする。」

「……。」

Aが唖然とした表情のまま顔を上げる。

「でもどうしても雰囲気的に断れない時は、極力触れないようにがんばる。」

「なにもそこまでしなくても…。」

困った様子で、何か言いたそうにしているAをもう一度腕の中へ抱きとめる。

「いや、決めたから。これはAに対する俺の愛の形。」

Aこそが俺の唯一無二のパートナーで、絶対的存在なのだということを、ここではっきり伝えなきゃ。

嬉しい？と冗談まじりに尋ねると…。

「世界一、大好きです…。」

これ以上ない言葉をくれた。





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