氷の国16

【パートナー】1　★ ページ46

★ゆづサイド

夕べ、初めてAを自分の所有物かのように扱ってしまって、少し罪悪感の中で目覚めた朝。

それでも、何事もなかったように接してくるAが、面白い。

「あの、ゆづさん。今日のご予定は？」

身だしなみを整えて妻としてのサポートをしてくれている中、自分もまた普段通りに対応する。

「うん。明日に向けての打ち合わせかな。博物館も一般公開するし、その最終チェックとか…。Aは？」

「そうですか。私はジョニーさんと明日の衣装の手直しがあるのでそちらに…。」

「あぁ、そうね。」

そうだ。春よこいの衣装は、以前着たものをジョニーがアレンジしてくれてるんだった。

うすいピンク色の春っぽい印象だったものがどう変わるのか、それも楽しみだ。

「でももうほとんど仕上がっているので、終わったら練習を見に行ってもいいですか？」

ふとAが上目遣いで尋ねてくる。

「あぁ！勿論いいよ。今日は午後から滑る予定だから、来たら声かけて。」

せっかくだからカオリさんを紹介しておこう。変なわだかまりがあったままなのは良くないし。

「ありがとうございます。」

「じゃあ俺そろそろ行くね。」

今日一日なにかと雑用も多いので出かけようとしたら、Aが不意に俺の腕を掴む。

「……。」

「ん？どしたの。」

何か忘れ物かと思って待っていると、小さな声でぼそっと呟いた。

「ぎゅってして…いいですか。」

ぎゅっ…？
それはいってらっしゃいのハグのことかな。

ふとAを見ると恥ずかしそうにうつむいている。
つか、そんな事今まで言わなかったのに、よほど昨日のごにょごにょが…いや、何思い出してんだ俺。

「おいで。」

ともあれ、こんなこと言われて嬉しくない男はいないので、ゆるむ頬がばれないようにそっとAに掴まれた腕を自分の方に引いて背中へと回す。
そして両腕で、ぎゅーっと力強く抱き締めた。

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