【欲しいもの】3 ☆ ページ12
「だってフィニッシュは春を振り撒く妖精さんだから。」
そんな中、ゆづ王子がしれっとメルヘンなことを言った!
「延ばすとなると新たなかっこいいフレーズを…。」
でもそんなことはお構いなしに、ひたすら自分の世界に入っているカオリさんは、何度もエンディングの部分をさらっている。
「ねぇ、ジャズっぽいの入れてみたら?」
「ジャズ…?」
不意にゆづ王子が手を腰にあててカオリさんにアドバイスをする。
「そうそう、かっこいいフレーズっつったらジャズじゃん。それで繋いだら。」
「かっこいい…ジャズ。」
するとここへきて、カオリさんがお洒落なフレーズを弾き始めた。
それはまるで鍵盤を叩くような動きで、これがよく音楽になるなと素人の私が感心するほどだ。
いくつか試しに弾いているとゆづ王子がぽんと手を叩いて…。
「それいい!」
「うーん…。」
「そこからさっきのグリッサンドに繋げたら?」
カオリさんが、言われるがままサビからジャズっぽいフレーズを弾く。そして流れるようなグリッサンドの後、やけくそのように最後の一音を思い切り叩いた。
するとゆづ王子が何か閃いたのか、今のもう一回弾いて!と、その場で振りを確認しだしたので、再び、今度はカオリさんの演奏に合わせて滑ってゆく。
二人の全力の演技と演奏。
それら全ての音がゆづ王子のスケートに合わさって、まるで魔法がかかったような一つの作品に仕上がった。
わぁ…素敵。
最後の部分しか見てないのに、なんだか泣きそうになってしまう。
「完璧!」
澄みきった音がやんで、ピアノから手を離したカオリさんが、満足気にピアノに座ったまま足をバタバタと鳴らす。
そして王子さまもまた流れる汗を手で拭いながら何度も頷いて。
そしておもむろにリンクから出てステージへと移動しながら駆け寄った。
「ありがと!俺最高に満足。」
「本番まだですけどね。」
「それもそうね。」
あはは!と笑顔の二人を見ていると、本当に良いプログラムができたんだなと私も嬉しくなる。
一段落したようだし、そろそろご挨拶しようと一歩踏み出したとたん、眼下に目を疑う光景が広がった。
「……。」
なんとゆづ王子が座ったままのカオリさんを抱きしめたのだ。
さらに背中をとんとんと軽く叩きつつ、もう一度ぎゅっとしてから離れる。
もちろん二人とも笑ってて、さもそれが当たり前のような雰囲気を醸し出しているのだけど…。
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鹿(プロフ) - あおさん» 表記の問題ですね。おそらく日本語にしたらどっちでもよさそうですが、そこはあまりこだわってませんでした笑 (2019年1月8日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - あおさん» うちはだいたいアップライトだから1時間くらいで書いてしまいましたがグランドはその分時間がかかるんですかねー。^^きっとそうなんでしょうね〜。こだわりはあったほうがいいですね! (2019年1月8日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
あお - て、33ページとかの、チゴイネルワイゼンじゃなくて、ツィゴイネルワイゼンでは?? (2019年1月8日 9時) (レス) id: 9b31bd131c (このIDを非表示/違反報告)
あお - 家にあるグランドピアノ四時間もかけて調律していただいているのですが(笑)こだわりが強すぎ?(笑)(5ページ目をみての感想(笑)) (2019年1月8日 8時) (レス) id: 9b31bd131c (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» ラブラブ期間中です^^なんかファンタジーっていくらでも話が続きます。ちょっとありえないこと書けるし。楽しいな〜って思います。明日はもうスケートが楽しみすぎて、音楽祭どころではない!! (2018年11月2日 13時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2018年9月24日 10時