氷の国15

【姉と弟】6　★ ページ48

「ユヅル。ジプシーダンスの衣装も振り付けも、全て意味があることなんだよ。」

真面目な表情でそう言われて、この件に関しては佳菜の味方なんだなとちょっとがっかりする。
となれば、これ以上ジョニーに首を突っ込まれるのは困るので、俺は右手で彼を制した。

「ジョニーは黙ってて。これは夫婦の問題だから。」

「夫婦！やだもぅ、やめてよその言い方。」

……。
吐き捨てるような佳菜の態度でスイッチが入った俺の心が徐々にヒートアップしていく。
夫婦じゃなきゃわざわざこんなこと言いに来たりしないのに、なんなんだこいつ！

「それにジプシーダンスはヨガみたいなもので、体幹を鍛えながら女性らしい身体になれる女性のための躍りなんだよ。」

それでも、黙っててと言ったのに従ってくれないジョニーに、こっちもため息がでる。

「だからって正室がやっていい踊りじゃないでしょ。もっと自分の立場をわきまえて。」

「ジプシーダンスをいやらしい目で見てるゆづがわきまえるべき！」

「運動するなら他のスポーツやりな。それが嫌ならしばらく外出禁止。」

腰に手をあてて上から目線で言い切ってやったら、佳菜が爆発した。

「むきー！なによ偉そうに！そもそも夫婦とか言う前に夫らしいこと何かしてくれたことあるの？！」

…は？
佳菜の言葉に一瞬戸惑う。
夫らしいこと…って。

「いや、好きで夫婦になった訳じゃないじゃん。」

何を今さら。と若干呆れていたら、佳菜がぷいっと横を向いた。

「だったら佳菜のことはほっといてよ。好きでもないのに夫づらしないで。」

「はぁ？！なんだよ、人がせっかく心配してやってんのに！」

「そんなの頼んでませーん。」

そしてふざけた態度であっかんべーをした。
このやろー…。

「とにかく今後一切ジプシーダンスは禁止。」

これは王命だ。と低く告げる。

「ふんだ。こんな時だけ王子っぽくしても無駄だからね。」

それでも佳菜は深刻に受け止めていないようで、また俺と目を合わせないままそっぽを向く。
すると、ずっと二人の会話を聞いていたジョニーが俺を振り返った。

「ユヅル。佳菜子が今一番頑張ってるジプシーダンスなんだから、禁止はかわいそうじゃない？」

そしてまた佳菜の肩をもつ発言をするので、俺も引かずに意見する。

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