氷の国15

【ずんだバトル】10　★ ページ31

ともあれ無事にアイスクリームをAに買ってあげることが出来て、俺はある種の達成感に包まれていた。

ひやひやしたけど、誰にもバレずに任務遂行できたことは俺的にも嬉しい限りだ。

「僕はずんだ嫌いじゃないんだよ？でも何て言うか好んで食べないんだよねー。」

さっきから向かいの席に座っている少年が、チョコアイスを食べ終わって、少しずつだけどずんだアイスを口に運んでいる。

ちなみに俺がアイスクリームを買っている間に他に座る席が無くなってしまって、成り行きで三人で食べることになったのは想定外だけど、相手は子供なので気にしないことにする。

「ずんだアイス美味しいです！」

「でしょー？」

まずAに俺のアイスを味見させてあげると、良い反応が返ってくる。

「ほのかな枝豆の風味が甘くて…。」

「色も綺麗なんだよね。あ、チョコも美味しい。」

先にお互いのアイスをスプーンですくって食べ合いをしていたら、少年が上目遣いに、お兄ちゃん達恋人？とさらっと聞いてきた。

「いや、夫婦。」

「ふーん。夫婦なのに敬語なんだ。」

Aがはっと口元を押さえている。
言葉遣いが元に戻っていたことに気付いたみたいだ。

「俺の奥さんお嬢さま育ちだから。」

しかも王族だし。言わないけど。

「ひょっとしてお金持ちなの？」

しかもそんな単純な子供の思考が面白い。

「ん？さぁねー。」

自分のずんだアイスの最後の一口を食べ終えて、ここはしっかりとぼけておく。でもあえて言うなら俺自身が自由に使えるお金は無いに等しいから、お金持ちではないかな。
あくまでも予算運用は大臣が仕切ってるし。

「絶対お金持ちだよ、じゃなきゃアイスおごってくれるなんておかしいし。」

「それはお前にずんだの美味しさを教えるためにだな。」

アイス一個でお金持ち呼ばわりされるとは思ってなかったけど、子供の感覚ってなんかかわいいなと思っていると、不意に少年がまだ残っているアイスのカップをテーブルに置いた。

「あーあ、やっぱ進まない。」

「こら、せっかくご馳走になってるのにちゃんと食べなきゃだめよ？」

するとそんな少年の行動にAが意見する。

「僕頼んでないのに。」

「それでも。あと少しなのに残すなんて失礼でしょ。」

頑張って食べなさいね。とあくまでも優しく伝えている姿に、ママになったらこんな感じなのかな？と勝手に妄想してしまって顔がにやける。

やべぇ、まだ本人から何の報告も受けてないのに早すぎるわ。

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