氷の国15

【ずんだバトル】7　☆ ページ28

☆主人公サイド

私たちの前後にカモフラージュのための護衛が並んでいる。

大丈夫かな…。
そもそもアイスクリームなんてわがままだったかな、とこの期におよんでマイナス思考になる私。

「ねぇ逆にさ、ここまでばれないって事は俺は全然オーラないのかな。」

ふと腕を組んで冗談ぽく首をかしげるゆづ王子。でもそんな考え微塵も思ってない私からしたらあり得ない発言だ。

「とんでもないです！きっとみんな雪解けまつりに夢中なんです。」

メガネもしてプライベート感を出してるし！とわざと気付かないフリをしている可能性だってあることを伝えつつ否定すると、さらに笑いながら、本当に真面目なんだから。と軽く髪に触れられる。

なんだ、からかわれただけか。

「でも並んでアイス買うなんて初めてだわ〜。」

「私だってそうです…。」

ゆづ王子が広いマーケットを見渡す。
お互い子供の頃から自由に城から出るなんて考えられない立場だったから、こんな経験がとても新鮮なのだ。

お店に行くのだって貸し切りにしてもらったり何人もの護衛を引き連れなきゃだめだったり本当に大変なんだから。

「俺ずんだアイスにしよっかな。」

そんな過去の事を思い出していると、不意にゆづ王子から聞き慣れない単語が出る。

「ずんだ…ですか。」

「うん、ずんだ餅のやつ。」

「……。」

ずんだ餅…？
返事ができずにきょとんとしていると、ゆづ王子がはっとして私を振り返った。

「…あ。ひょっとしてAずんだ知らない？」

少し驚かれてしまったけど、事実だから仕方がない。

「はい、存じ上げないです。」

私は素直にうなずいた。

「そっかぁ！まだ冬しか知らないもんね。ずんだはね、枝豆のことだよ。」

「枝豆…。」

それなら知ってるし食べたことがある。
どうやらずんだとは枝豆をすりつぶしてペースト状にしたものの呼称らしい。

「初夏が旬なの。一応氷の国の郷土料理の一つだから覚えてて。」

郷土料理か…。ならば私も食べないわけにはいかないな。というより食べてみたくなった。

「あの、私もずんだアイスにします。」

純粋にどんな味なのか興味を持ったので、迷わずメニューの変更を決める。

「え、Aも？いいよ、俺の少しあげるから。」

「でも…。」

確かに同じ味二つより違う物を一つずつにして先に味見していただくという方法もあるけど…。

でも順番待ちの列で並びながら二人でメニューの相談など、まるで普通のデートみたいだなと思っていると…。

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