氷の国15

【ずんだバトル】4　☆ ページ25

☆主人公サイド

久しぶりに素晴らしい音楽をこんな間近で聴くことができて、私はもう全てのコンサートが終わったというのに、放心状態で立ち上がることが出来なかった。

でもそれはゆづ王子も同じだったようで、一曲目からもう泣いていた事は突っ込まないのがマナーなので、私の胸に秘めておく。

短い時間だったけど、こんなにも良い気分になれたことをありがたく思いふとゆづ王子を見ると、隣の護衛に何か耳打ちをしていた。

どうされたんだろう…。
そしてお互い何度か頷き合った後、その護衛はさっとどこかへ行ってしまった。

「あの、何かあったんですか？」

私が興味本位で尋ねると、ゆづ王子が笑って、内緒。と人差し指を唇にあてる。
そうなんだ…教えてくれてもいいのにな、と思いつつも、その表情から察するにトラブルではなさそうだから内心ほっとする。

「じゃ、次行こっか。」

もうほとんどのお客さんが席を立った中央広場。
人気も少なくなった所で次の目的地へ向かうために私も立ち上がる。

「そう言えば、二曲目の曲は何という曲だったのでしょう。」

また手を繋いで歩きながらお話するのは、一番最初に演奏して、物凄いインパクトを残してくれた、カオリ・サカモトについて。

春にちなんだ曲と言っていたけど、私は初めて聴く曲だったなと思い歩きながら尋ねると、ゆづ王子が苦笑いしつつ、うつむき加減で言いにくそうに教えてくれた。

「あーあれ？千本桜っていう曲。」

千本桜…。
やけに元気一杯の曲だったので、少し春らしくないなと思っていたのけど、タイトルに桜が付くんだ。
だから春の曲か…なるほど。

「かっこいい曲でしたね。」

「原曲は歌詞付きだよ？」

そうなんだ！

「じゃあ今回のはピアノバージョンということですか？」

「そうそう。一曲目もそうだし。」

そっか。それにしても、降り幅の大きい選曲だったなと思いつつ、二人でマーケットを歩いていく。

するとゆづ王子が少しだけ滲んだ額の汗をぬぐいながら、喉乾いたな…。と呟いた。

「あ、何か飲みますか？」

そう言えば私も…。と思っていると、今度は満面の笑みで私を振り返って一言。

「うん、A。そろそろアイスクリーム食べよっか。」





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