氷の国15

【かき氷】5　☆ ページ18

☆主人公サイド

ゆづ王子と腕を組んでマーケット内を歩くなんて、これは夢じゃないだろうか。

それに、ゆづくんだなんて…。
さっきから心の中で何度も練習しているけど、恥ずかしいやら照れるやらで変な汗が出る。

しかも、普通の格好をしてメガネをかけただけというラフなスタイルに、完璧とはいかないまでも、ある程度のオーラは消しているからすごい。

でも勘の良い人には見つかってしまうかもしれないから、ここは慎重かつ冷静に行動しなきゃ。

さて、このままあてもなく歩き続けるのもつまらないので、どうするのかな？と思っていたら、ゆづ王子がおもむろに向きを変えて、近くにあったお店へ入った。

「あ、かわいいこれ。」

さっと組んでいた腕をはずして、ディスプレイされている物に顔を近づけてじーっと見ているのは…。

「ハーバリウムですね。」

「A、言葉。」

「あ、ハーバリウムだ、よ？」

しまった、つい癖でいつもの口調が出てしまった。
ゆづ王子もしっかり指摘してくるから、なかなか気が抜けない。

ちなみにハーバリウムとは、オイルで満たされた小さな瓶に、プリブリザードフラワーを入れた観賞用のものだ。
つまりここは、雑貨屋さんかな。

「ハーバリウムか…。」

手にとって持ち上げて、様々な角度から見ておられるのだけど、何に対しても本当に研究熱心方なのだなと感心する。

「以前真凜に見せてもらったことがあるんです。数ヶ月くらいこのまま楽しめるそう…だよ。」

危ない…。

「へぇー、綺麗。これ俺の衣装の色味で作ってくんないかなー。」

そう言ってハーバリウムを元の位置に戻したのだけど、今のはなかなか面白いアイデアかも。
歴代の衣装をハーバリウムで表現したら、とても綺麗だろうな…。

よくこんなことを思い付くものだとまた感心していると、ゆづ王子がさらに店の奥へと入っていったので私もそれに続く。

このお店には、前に行ったアンティークのお店とはちょっと違う現代風のかわいい小物がたくさんあって、とにかくきょろきょろしてしまうのだ。

そんな風に寄り道をしながらもゆづ王子のお隣まで行くと、今度は棚に並んだ食器を眺めていた。

「あ、かき氷のコーナー。」

よく見たらスプーンもたくさん。
まだ春なのに先取り感がすごいなと思っていると、ゆづ王子がまた一つ手に取った。

「A見てみ？今年のイチオシ！って書いてある。」

そう言って見せてくれるのは、玉虫色の少し変わった色味の器だ。

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