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【祝勝会】8 ★ ページ8

うなずくハンヤンを見届けて、自分も馬車に乗って扉を閉めたら、それを合図に護衛が馬に鞭を打った。

窓から、動き出す馬車に向かって一希が大きく手を振るのが見える。

「コーチ!Aさま!お元気で!」

その声に嬉しくなりつつ、やっぱりコーチを引き受けてよかったなとしみじみ思いながら、見えなくなるまで一希に手を振った。

「ゆづさん、本当にかわいい生徒でしたね。」

そして。馬車の中でAと二人、たった今別れた一希を思う。

「俺、現役やめたらコーチやろっかな。」

漠然とそんなことを想像してしまうほど、今回の経験は大変だったけど、楽しい数ヶ月だったから。

「それはずっと先の話ですよね?私はまだ現役のゆづさんが見ていたいです。」

「……。」

Aがちょっとすがるように俺に問いかける。
そっか。Aはまだ俺の試合を一度しか見てないんだった。

「ゆづさんには、リンクの外よりも中の方がお似合いです。」

「A…。」

確かに、まだまだリンクの中でやり残したことはたくさんある。
クワドアクセルだってその1つだし。

「それは国民もみな同じ気持ちですから。」

今回の試合はジュニアにも関わらず、たくさんのお客さんが見に来てくれていた。
それら全てが俺がコーチをしたから…とは言わないけど、注目されるのは嫌いじゃない。

「まだまだ頑張らなきゃ!かな?」

「そうです。ゆづさんが試合に出なくなったら、皆悲しみます。」

「Aも?」

「勿論です。」

きっと佳菜子さまもです。と言われて、久々にもう一人の奥さんのことを思い浮かべる。

「…じゃあ出来るだけ長く滑れるように、Aにも頑張ってもらわなきゃ。」

「私ですか?」

そう。
本人は、一体何を?とでも言いたげな顔をしているけど、現役を続けるというのはメンタル的にもとても大変なことなのだ。

「いつも家庭があったか〜くて、明るい妻がいてくんなきゃね。」

それだけで。どんな疲れも吹っ飛んじゃう!

「では…今夜は特別に色々ご奉仕いたしますね。」

へ?ご奉仕…。
なんだろ、今ちょっと…いやかなり邪な想像をしてしまった。

「えっと…どんな?」

戸惑いながらも尋ねると、意味深な笑みを浮かべたAが、内緒です。と言う。

なんだろ…すっげー気になるけど、ここで色々詮索するのもなと思い、言葉を続けるのをやめる。

馬車の音が鳴り響く室内で、一人照れる俺だった。





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鹿(プロフ) - 心菜さん» 羽生さん大変^^;でも、若いから大丈夫っぽい!金沢の楽はいろいろ変なことがあったけど、本人でもないのに、なんでそんなに想像するのかな〜という感じ。ま、こんなん書いてる時点で私が一番アウトですけども! (2018年6月5日 17時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 神戸、静岡はアーティストが代わるので別プロですね。7/1がFaOIオーラスで翌日授賞式。忙しい〜(><)クワド跳んでくれるのは嬉しいけど、ステイヘルシーで! (2018年6月3日 15時) (レス) id: 15da2c977a (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» ショーに授賞式に忙しいですね。練習大乗かなー。リハビリになっていいかも?このお話も長く続きすぎて、飽きられてるかなーとおもう今日この頃。次のお話も決まってないし、もう少しお付き合いください〜^^; (2018年6月3日 7時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 碧海さん» 羽生さんの幸せだけをただ願っています^^お話に触れてくれてありがとうございます〜。次移行なので、もう少しお待ちください〜〜 (2018年6月3日 7時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 心菜さん» そんな近くで羽生さんを!すごい…。神戸公演では、また違うプログラムなのかなーと勝手に思っているのですが、昨日はついに4回転でましたね!^^ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2018年4月5日 18時

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