氷の国13

【珍しい来客】2　★ ページ45

★ゆづサイド

なんとか明るいうちにお城まで帰ってくることができてほっとする。
さっとんを途中で下ろしてからここまでの道中、今にも寝てしまいそうな昌磨をなんとか他愛もないお喋りで覚醒させながらの帰城。

正直、ちょっとだけ疲れた。

馬車から降りて、昌磨はすぐに付き人につれられて場内に用意された部屋へ。
またしばらくここに滞在するし、いつでも会えるだろうから挨拶もそこそこに俺も自室へ戻る。

「はぁ…。」

しかし、廊下を歩きながらも、コウノトリに言われたことが頭から離れないでいる俺は、これからAに会えるというのにもかかわらず、いまいちテンションが上がらない。

これじゃあ変に思われるかも…と思い、いったん扉の前で深呼吸してから頬っぺたをぺしっと軽く叩いて気合いを入れた。

「よし。」

俺は、えいっとドアを開けて部屋にいるであろうAを探す。
きっといつものようにソファーに座って本でも読んでいるはずと、視線を向けるのだが…。

「あれ？いない。」

てくてくと中へ入ってぐるっと部屋を見渡してみても、リビングに人の気配はない。
おかしいなと思い、他の部屋を幾つかのぞくと、まだ外が明るいにもかかわらず寝室にAの姿を見つけた。

寝る時間でもないのに…。
俺は寝室の窓際に立って外を眺めている後ろ姿に声をかける。

「A？」

すると俺に気付いて振り返るAが、人差し指を口許にあてて、しっ！と合図した。

どうしたのかな…。外に何かあるのかな？
今度は手招きされたので近寄ってみると、にこにこしながら俺の腕をとって隣に引っ付いてくる。

そして、見てください。と、そのまま外を指差した。

「鳥が巣作りをしてるんです。」

「え、巣作り？」

「ここからよく見えるんです。」

Aが指差した方を見てみると、向かいの棟の屋根に、この間までなかった巣らしきものが…。

「おぉ…。」

「もうすぐ親鳥が戻ってきますよ？…ほら。」

Aがさっきとは違う方向を指差すと、夕方の空の向こうからちょっと大きな白黒の鳥がこっちに向かってくるのが見えた。

徐々に近づいてくるその姿を確認するために、じーっと目を凝らす。
あれ？あの鳥もしかして…。

「コウノトリじゃん！」

勢い良く窓枠に手をついてガン見する。

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