氷の国13

【置物】9　★ ページ32

「コウノトリの置物だよ。」

「かわいいですね。」

木で出来ていて、片足で立っているちょっとリアルなコウノトリ。
丸い目がちょっとキツくて、あまりかわいい感じではないけど、さっとんにはかわいく見えるのか。

「これでゆづくんもパパだね。」

さっきの女性が大きな声だったからか完全に話の内容を聞かれていたようで、昌磨に冷やかされる。

「別になりたくないわけじゃないから。」

まだその時じゃないだけ。と内容が内容なだけに顔をしかめつつ、置物を両方のポケットに一個ずつ入れた。

「優しいパパになりそう。」

「僕はドＳだと思う。」

そんな俺に対するさっとんと昌磨の意見が分かれる。

「俺は絶対に優しいパパになるから。」

いい加減ドＳのイメージを払拭したいので、子育てには積極的にかつ優しく参加するつもりであることを言っておく。

たとえ乳母から煙たがられたとしても、自分の子なんだからある程度は自分で育てたい！

「自分に厳しい人は他人にも厳しいって言うよね。」

「ゆづくんは一生懸命なだけで、厳しいのとは少し違うような気がします。」

「でもどうして今日Aさん来てないの？」

やっと世継ぎのネタから解放されたかと思ったら、昌磨がわざとらしく辺りをキョロキョロ見渡した。

それはさっきから俺も思っていることで、公務だからAを連れてきちゃいけないような気になってたけど、さっきの女性からも指摘されたように、ここへは夫婦で来るべきだったかもしれない。

それは佳菜よりもAの方がよかったんだ。

「それは…やっぱ寒いし…。」

俺は悔しさを表に出さずに全く関係ない理由を述べて場をやり過ごそうと試みる。

「この服あったかいから大丈夫なのにね。」

昌磨がオレンジのダウンをさすりながら笑顔で言うのだが、察しろよという方が無理か。
あぁそうだよ。連れてこなかったのは完全に俺の選択ミスだ。

「あ〜スケートしたい。」

公務が嫌なわけじゃないけど、今は思い切り滑って汗かいて、このもやもやを吹き飛ばしたい。
そして部屋でAとおしゃべりしながらお茶して、ぎゅーってしたい！

今頃何をしているだろうか…。
今朝別れたばかりなのに、Aへの想いは募るばかりだった。





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