氷の国13

【置物】7　★ ページ30

「歌舞伎役者みたいな顔かも…？」

ふふふ。と肩を揺らして二人で笑っている姿を見ると、これ本当に俺の知ってる昌磨かと思う。

しかも歌舞伎役者ってなんだ。…似てるけど。

「あちらの王子さまもお若い方ですね。宮原さんとも非常に仲がよろしくて。」

ちょっともやもやしていると、さっきとは別の、比較的年配の女性が話しかけてきた。

「え、うん３つ年下。眠りの国の王子なのでたまに眠そうなのは勘弁してやってね。」

ここの人は、コウノトリを見に来てくれること自体は嬉しいようで、昌磨もさっとんもそれなりに歓迎してくれているようだ。

「佳菜子さまやAさまにも見に来ていただきたかったです。」

この村も当然氷の国の領土だからか、当然のように俺の妻達の名が出てくる。

でもそれな…。なんで俺だけ一人で来ているんだとでも言いたげだ。

「今度は連れてくるね。」

ここはあまり突っ込まれたくないので、あくまで自然な笑顔で答えておく。

さて、これからどうするのかな？と尋ねようとしたら、いきなり女性がぽんと自分の手をたたいたので、何かなと振り返る。

「あ、コウノトリは子孫繁栄の象徴なんですけれど、王子さま達はいかがですか？」

「へ？」

「ですから、お世継ぎは？」

あまりにストレートに言われてぽかーんとしてしまう。
これひょっとしてあれか、おばさま層特有の空気読まない発言。

「二度目のご婚礼から随分経ちますし、勿論近々国民に嬉しいお知らせをいただけるのですよね！」

少し興奮ぎみに言われて、若干引く。

「あはは。まぁそのうちね。」

やば。この手の話題はあんまり答えたくないのではぐらかすつもりで下を向くのだけど、残念なことにさらに食いつかれてしまう。

「それはいけません！一日も早く皇子を作らねば。」

生むのは王子さまでなく王女さまですよ！と当たり前のことを言われて、あぁまたか…と微妙な気持ちになる。

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