氷の国13

【置物】2　☆ ページ25

「そのうちゆづ王子に呆れられますよ？」

「そんなこと言わないでよ、私みたいになんの取り柄もない人間が側室になれたこと自体奇跡なんだから。」

花の種のおまけで付いてきた私が、正直よくここまで王子さまの寵愛を受けられたなって思う。

「そこまでおっしゃらなくても…。」

悪かったですよ…。と真凜に謝られるけど、よくよく考えてみるとゆづ王子は一体、私のどこを気に入ったのだろうか。

ある日突然、やっぱりつまんない子だということに気付いて、同室解消とかになったりして…。

「ねぇ真凜、いつか私なんていらないって言われたらどうしよう…。」

肖像画を見ながら、この表情と真逆の怖い顔を想像する。

「Aさま、何をおっしゃってるんですか？！断じてそんなことはありえません！」

完全に料理の手を止めた真凜に本気で怒られてしまった。

「た、例えばの話だよ〜…。」

怖いのでとりあえず下手にでておこう。

「これ以上くだらない事をお考えなのならば、さっさと皇子をお作りください。そうすればAさまは一生安泰ですから。」

「……。」

真凜からの当然の意見に身を縮める。

子供か…。
それは勿論そうだけど、ゆづ王子はまだ欲しくなさそうだし、私だけが望んでも無理っていうか…。

それに出産はそれなりに命懸けなのだ。怖くないわけがない。

悶々と考えていると、不意に真凜が何かを思い出したように手をぽんと合わせた。

「あ、確かコウノトリは子供を授けてくれる鳥だったはずだから、ゆづ王子が戻られたら何かしらの心境の変化があるやもしれませんよ。」

そろそろご決断する時かもしれません。とさっきよりは穏やかに言われて内心焦る。

その云われは私も聞いたことがあるし、確かに子供を生むことは私にとって一番大事な義務だから、そうなれば反論の余地はない。

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