氷の国13

【申し送り】4　★ ページ12

「結弦王子。今日はずいぶん機嫌がよろしいようで。」

執務室で真面目に仕事をしているつもりだったけど、どうやら顔が緩みっぱなしだったらしく、まっちーから突っ込みが入る。

「え？普通だよ？」

まぁ原因はAとの夫婦仲が上手くいってるということに尽きるから、ここはしらを切らせてもらおう。

「仕事中はもっとしゃきっとして下さい。突然の来訪者でも来られたら…。」

「そんなん滅多にないじゃん。」

もしそうなっても、一応メリハリはつけられるつもりだ。

「そうですか。では機嫌がよろしい様なので今のうちに残念な申し送りを致しますね。」

え、残念な申し送り？
まだ午前中だぞと思いながら、なんかいきなりテンションの下がることを言われて俺の動きが止まる。

「ちょ、何それ。」

仕事の手を止めて、まっちーに向かって手を伸ばす俺は緊張しつつ次の言葉を待つ。
やばい、汗が…。

「昨日のハンヤン亭でのお食事の請求書が回ってきております。」

「あぁ！」

なんだそんなことか。
教え子の祝勝会だし、俺が払うからこっちに回せって言っといたやつだ。

「王子さまのポケットマネーからということでよろしいですね？」

「うん。」

それを聞いて一気に気が抜けた。
びっくりして損したわ。

「ではお支払しておきます。念のため金額のご確認をお願いいたします。」

まっちーが請求書を裏向けてそっと俺の机に置いたので、何の気なしにめくってみる。
三人で食べる量なんてたかがしれてるし、せいぜい三千円くらいだろうと金額を確かめると…。

「へ…？！」

思わず二度見する。な、なんだこれ！！
何かの間違いじゃないだろうかと、目を凝らしてゼロの数を数える。
でも何回見ても４つあるぞこれ！

「庶民のお店で何をどれだけ食べればこんな金額になるんでしょうかね。」

「え？え？ラーメンたったの３つで、はちまん…。」

嘘だ…何かの間違いでは…。

「確かハンヤン亭はラーメン屋ですよね。まるで高級中華並みのお値段です。」

まっちーの高級中華という言葉に頭が即座に反応する。

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