氷の国13

【祝勝会】1　★ ページ1

★ゆづサイド

その日の夕方。馬車で城下に出た俺とAが向かうのは、一希に指定された祝勝会会場。

そのお店は、中心部から一本路地へ入った場所のようだ。

「貸し切りにしたんだって。」

「一希くんが？」

本当ですか？とAが驚くのも無理はない。
一希の一体どこにそんな人脈があるのか想像できないんだろう。
正直俺も大丈夫か？と少し不安だ。

「どんな店かな。」

「というか、一希くんに任せてしまってよかったのですか？」

お城でした方がよかったのでは…。と不安げな様子のAは、きっと俺のことを心配しているんだろう。

「大丈夫だよ。いざとなったら逃げるし？てかたまには若い子が食べてるもん食べてみたいでしょ。」

俺はこう見えて(？)、いわゆるジャンクフードも好きなのだ。
今回もきっとその類いかなと勝手に思っていると、護衛が目的地の到着を知らせてくれる。

「王子さま、到着いたしました。くれぐれも騒ぎになりませんよう、お気をつけください。」

「うん、わかってる。行こうA。」

元々人通りは少ない場所だし大丈夫だろうと、Aを連れて馬車から降りる。
すると目の前の店から、馬車の音に気付いたのか一希が出てきてくれた。

「コーチ、お待ちしてました！」

「お待たせー。」

返事をしつつ、俺は一希を見るより先にこの店構えに目を奪われる。
へぇ〜、ここ…。

「ラーメン屋さん！」

俺が言うより先にAが後ろで驚愕している。
そりゃそうだよな…。よりによってラーメン屋って…また俺達王族と縁遠い店選んだなぁと若干困惑する。

「あ、まさか側室さまはラーメンが苦手とか…。」

「いや、苦手じゃねーと思うけど…。A大丈夫？」

振り返って一応確認する。
生粋の王女さま育ちだしラーメン屋は無理かな。
もし慣れてないなら賢二先生の店でも行くかと考えていたら、突然Aにがしっと腕を掴まれる。

「わ、わわわ私…。」

まさかあまりに庶民的でびびってるか…。こりゃだめかと一希の顔を見合わせる。

「一希、悪いけど…。」

「私夢だったんです…！」

「へ？」

俺がその意味を理解する前に、顔を真っ赤にしたAが俺の肩に顔をうずめて小さく叫ぶと、周りの人に何事かとじろじろ見られ始めたので、とりあえず店の中へ入ろうと一希の背中を押し込む。

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