氷の国10

【書簡と使者】6　★ ページ48

「スケートも毎日頑張ってるって。私も負けてられないです。」

「そうだね。」

強い者の存在はモチベーションを維持するのに最適だ。
これは男も女も関係ない。

「じゃあ…練習があるので失礼します。」

「うん、頑張ってね。」

またぺこりと頭を下げて出ていくさっとんを見送る。
これから一般開放だっけ。確か新しいお城便りに載っていたはず。

確認しようと、いつも用意してある俺専用の棚をごそごそと見てみると…。

「えっと〜…ひゃっ！」

手に取っていきなり飛び込んできた表紙の見出しに、一気に汗が出る。

『羽生結弦王子の思い。〜スケートから紐解く王族の未来〜』

そうだ、インタビュー受けたんだ…。

少し中を見て目を通していく。
最終チェックはまっちーに任せてるから大丈夫だとは思うけど…。ん？

『正室さまと側室さまを繋ぐかき氷の絆』

「……。」

なんだこれ。

『冷たいようで熱いこのアイテムは今年のイチオシ。氷の国へ来てよかった！と思っていただけるようなトッピングを募集中！』

…めっちゃかき氷がフューチャーされてんじゃん。

「Aこれ読んだのかな。」

ぱらぱらとページをめくりながら、自分の発言内容を辿る。
そういえばAは今朝、温室へ行くと言っていたけどまだいるだろうか。

「……。」

ふと、さっとんからもらったお菓子の箱に目をやる。
奇しくも今、ちょうど３時の休憩時間だ。おまけにまっちーはいない。

「…温室か。」

刑事のやつ、Aにちょっかい出してないかな。
シロの姿なのをいいことに、喉元をよしよしとかさせてんじゃねーだろな。

「……。」

俺はお城便りとお菓子の箱、それとAのお母さんからの手紙を持って、足早に執務室から出た。




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