氷の国10

【書簡と使者】5　★ ページ47

それから昼食を挟んで。
まっちーもまだ戻らない中、一人で黙々と仕事をしていると、不意に部屋の扉がノックされる。

いつものことなので生返事で、どうぞ。と返すと、遠慮がちにドアが開いた。

「おじゃまします、ゆづくん…。」

ぺこりと頭を下げつつ、小柄な女の子が入ってくる。

「え、さっとん？」

てっきり大臣かと思っていたので、驚いて声が裏返ってしまう。

「少しいいですか。」

何か嬉しいことでもあったのか、はにかみながら俺の側へ来てくれる。

「うん、いいよ。どしたの。」

とりあえず書類を横に退けて座ったまま向き合うと、さっとんがおもむろに何かを差し出した。
箱…かな。

「実はこれ、作ったんですけど…。」

「え、何？」

かわいくラッピングされている両手サイズの物だ。もしかしてプレゼント？

「お菓子です。こないだコウモリさんに、昌磨くんからの手紙を思ったより早く届けてもらえて…。」

「あ、文通ね！」

フェイ、昨夜眠りの国へ行ってたんだった。

「自分も楽しみにしてたので…。ゆづくんを通してお礼を…。」

「そーなの？」

そういうことなら喜んで頂こう。

「良かったら食べてください。」

「ありがと。あ、今フェ…じゃない。コウモリさん温室にいるんだよ。」

「そうなんですか。」

「だからみんなでいただくね。」

もらった箱を目の高さまで上げる。

「はい。口に合うか分からないですけど。」

「昌磨相変わらず寝てんの？」

俺が箱を置いて冗談のつもりでその後の様子を尋ねると、さっとんが何かを思い出したように笑った。

「昌磨くん、弟がいるんですけど、その彼はあまり眠くならない体質らしくて。」

「へぇー。」

兄弟がいることは知ってたけど、真逆なんだな。

「悔しいから寝ないように、頑張ってるみたいです。」

「まじか。」

昌磨の弟がなかなか優秀らしいという噂は聞いたことがある。これを気に少しは国の事を真面目に考えてくれたらいいけど。

【書簡と使者】6　★→←【書簡と使者】4　★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す