氷の国10

【二つの名前】7　★ ページ42

「じゃあさ、今度氷の神殿へお参りしよっか。まっちーに頼んで公務として予定組んでもらうから一緒行こ！」

王族として、定期的に氷の神様に挨拶するのは当たり前のこと。
結婚してからまだ一度も行ってないから、時期的にもそろそろ良い頃だ。

明日は仕事だし、その時にでもまっちーに打診しておこう。

「だけどシロ…人間でしたね。」

ふとAが憂いのある表情でつぶやく。

「…どしたの。」

「なんか、信じられないと言いますか…。」

苦笑いしつつ首を横に振る。
かわいかったシロからいきなり妻になれ…とか言われて怖かったかな。

「そうだね、普通ならあり得ないことだよ。」

おまけに俺の幼なじみで、バンパイアまで側にいるし。

「私、狐のシロのことは好きでしたけど、人間の刑事さんに結婚を申し込まれるなんて思ってませんでした。」

「まぁね…。」

Aのしてきた只のスキンシップが、今回はおかしな方向に行ってしまっただけなんだけど、刑事も最初から元人間だって明かせばややこしくなかったのに。

フェイといい、動物に変化できるやつはどうもまわりくどくて秘密主義の傾向がある。

「助けなければ良かったのかな、とも考えてしまいますし…。だけどそんなこと…。」

「A、Aのしたことは一つも間違ってないよ。シロのおかげでA達が助かったのは事実なんだし。この場合、刑事が狐族だったことがそもそもの原因。でもこれは必然だから誰の責任でもないの。」

だから気にしなくていいよ。とここは優しく諭しておく。
Aが罪悪感を抱くことなんて微塵もないし、そもそも俺自身、求愛されたことを責めるほど了見は狭くない。

「私は…ゆづさんだけです。」

「ん？」

「好きなのは…。」

「……。」

「この先、ずっとです…。」

……。
不意にAからの告白に顔が熱くなる。
言ってるAもピンク色の頬を押さえて…。

恥ずかしくて二人共うつむいてしまった。




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