氷の国10

【白狐の正体】3　☆ ページ29

☆主人公サイド

お城に戻っていきなりゆづ王子と佳菜子さまの微笑ましいやり取りが見れるなんて思ってなかったので、嬉しくて心の中がほんわかあったかくなる。

だけど、太陽の国へ帰るなんて…。そんなこと、これっぽっちも考えていないので内心笑ってしまった。

「A、北の塔ではどんなだったの？」

不意に好奇心旺盛な佳菜子さまに前のめりで尋ねられる。
どんな、と言われても嵐以外はとりたてて平和だったから…。

「狐飼ってたんです。」

「ぶっ！」

隣のゆづ王子が、そこかよ！と吹いた。
やっぱり一番の思い出はシロのことだなと思ったのだ。

「狐？何それー。」

「怪我をしていたから看病してたんですけど、最後は逃げちゃって…。」

あの時のことを思い出すだけで、今度はなんだか悲しいような複雑な気持ちになる。

「そうなんだ…。あ、狐といえばさ、温室の近くに白い狐が出たって今朝ばあやが言ってたよ？」

「「え？！」」

ゆづ王子とハモった。
今白い狐って…？！

「温室に…それ本当ですか。」

「うん、お城の敷地内に入って来ようとするから追い払うんだってパトリックも…。」

追い払う！

「待って。A、それってひょっとして…。」

かき氷をテーブルに置いてゆづ王子と顔を見合わせる。
このタイミングで白い狐なんて…。

今私達の想像していることはおそらく同じだろう。
その狐が…シロなんじゃないかという疑念。

「佳菜子さま？その白い狐というのは、今現在も温室付近にいたりするのでしょうか…。」

「え、どうかなぁ〜…。」

でもそれがどうしたの？と可愛く首をかしげておられる。

【白狐の正体】4　☆→←【白狐の正体】2　★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す