氷の国10

【休日】8　★ ページ26

「かき氷器でしょこれ。」

「そう、それです！」

ぽんと手を合わせたAの声と共に、佳菜の声が重なる。

「あったり〜！じゃ、食べようか。」

かちゃりとテーブルに置かれるガラスの器とスプーン３つ。
これは…まさか今から？

「待て。この寒いのにかき氷かよ。」

「暖かい部屋で冷たいかき氷を食べるのが最高に美味しいんだよ？ちゃんとトッピングも持ってきたんだから。ほらゆづ、さっさと氷入れて回して。」

「俺が？！」

「あったり前でしょ。こんな力仕事、か弱い女の子にさせる気？」

「……。」

「Aだって久しぶりに食べたいよね！」

「え！は、はい…。」

突然Aに振るあたり、それ絶対言わせてるだろと思う。

「あーもぅ分かったよ。」

不本意だけど一回食べたら納得するだろうと、言われた通り保冷庫から氷を出してかき氷器に入れた。

ごりごりとハンドルを回すと、重たいながらも削った氷がふわふわと出てくる。

「わー綺麗！」

早く食べたい！と佳菜だけが盛り上がっている。

「一杯だけだからな。」

それでなくとも、俺とAはたった今寒いリンクから戻ってきたばかりだというのに。

「A、トッピング開けてみて？」

かき氷器を回す俺の傍らで、不意に佳菜がそっと箱を差し出した。
それを受け取ったAが素直に蓋を開ける。

「あ！パイナップルが入ってる！」

中をのぞいたAが驚いた。

「そうなんだよ〜、太陽の国から取り寄せたの。」

Aのためのお祝いだよ。だなんて…さすが佳菜。
それに俺もパイナップルは数えるほどしか食べたことがないからちょっと嬉しい。

「佳菜子さま、ありがとうございます…。」

まだパイナップルを見て感動しているA。
そんなに喜ぶなら俺も今度取り寄せてみようかなと、密かな対抗心を持ったのは言うまでもない。





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