氷の国10

【休日】3　☆ ページ21

☆主人公サイド

ゆづ王子のスケートを見せていただくつもりが、ジュニアの選手の指導を見学することになり、それはそれでわくわくしながらリンクを見ている私。

彼がいつかのお手紙に書いてあった子だということはすぐにわかったけど、本当に子犬のようにかわいらしくて和んでしまう。

「そこは一旦ちょっと左向いてからふわっと右手出して。」

「こうですか？」

「そうそう。こうね。」

所々大袈裟に。と振り付けの見本を見せるゆづ王子。それによって一希くんの演技がどんどん変わってゆくのが、素人の私にもよくわかってすごいなと思う。

「めっちゃ体力が奪われるんですけど…。」

「とにかく慣れて？じゃこれにジャンプ入れていくから。」

指導するだけでも汗をかいているゆづ王子。
いつだって全力で取り組む姿は、見ていて本当に気持ちがいい。

「曲かけますか？」

「うーん…とりあえず頭の中で鳴らして。途中止めるかもしんないし。」

分かりました。とプログラムを頭から通していく一希くん。だけど最初の４回転を綺麗に降りたところでゆづ王子に動きを止められる。

「どこか変でした？」

一希くんが尋ねるのも無理はない。私だって今のはほぼ完璧に見えたのだ。

「そこまでいいジャンプが跳べるんなら、入りをちょい難しくしよ。」

「え！」

手を腰にあてながらさらっとおっしゃる。
これは…かなりのドＳ発言なのでは。

「そうだな〜、よし。ターン入れよう。」

「えぇ？！」

百聞は一見にしかずなので、まずは見本をとゆづ王子が助走を始める。
そしてくるっと綺麗なターンをした後、軽やかにクワドを跳んだ。

そしてそのまま一希くんのプログラムを続けて滑っていく。

「……。」

呆然とそれを見ている一希くん。

それもそのはずだ。
こう言っては失礼だけど、明らかにゆづ王子のスケートの方が無駄がなくて美しい…。

「じゃあ一希、やってみて。」

途中で止めてそうおっしゃるゆづ王子のお顔は笑顔だけど、まだ一希くんが固まっているということは…難しいのかな。

「出来ますかね…。」

「出来る出来る。」

はい、やって。と今度は手をぱんと合わせた。
拒否権ないんだ…。

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