氷の国10

【bitter】7　☆ ページ18

☆主人公サイド

朝、目覚めた私はゆづ王子を起こさないようにそっとベッドを抜け出して着替えに向かう。

散らばった衣服を軽く身につけて静かに扉を開けると、もう以前の寝室だった衣装部屋へたどり着く。

タンスからワンピースを一着手に取り、ぱっと着替えてからまたゆづ王子のお休みになっている寝室へ。

ベッドサイドに腰かけて、その寝顔をじーっとのぞいて…。

「ゆづさん、起きてください。」

声をかけるけど…なかなか目覚めない夫。
今日はお仕事じゃないのかな。

「だといいのに。」

だけど寝坊して遅刻とか、王子さまとしてあるまじき事なので、今度は揺すってみる。

「ゆーづーさん！」

「う…。」

眩しそうに目をこする手首に、私のプレゼントしたブレスレットが見える。
ちゃんと着けてくれていることが嬉しくなるけど、今は早く起こさなきゃ。

「あ、天井にフェイさんがいます。」

「んー…え？！」

ゆづ王子が飛び起きて天井を仰ぎ見た。効果覿面だ。

「ふふ、嘘ですよ。」

「んも〜、びびったぁ…。」

今度は力が抜けたようにがくりと項垂れている。以前実際にあったことなので本気にしたかな。

「あ、それより今日お仕事はいいのですか？」

私が尋ねるとはっと息をはいて、今日は休み。とシーツを抱きかかえてまた寝転んでしまった。
なんだ、良かった。

「本当にフェイいない？」

「いませんよ。」

そしてもう一度天井をチェックするゆづ王子。そんなに心配なのだろうか。

「所でゆづさん、フェイさんは今どこにいるのですか？」

塔から出ていったきり姿を見ていないから少し心配していたので訪ねてみる。

「ん？あぁ、ちょっと交信してみよっか。」

人差し指を額にあてて目を閉じるゆづ王子。
少しの間じっと待っていると、不意に目を開けてにこっと笑った。

「ゆづさん？」

「温室にいるって。今夜眠りの国へ行くみたい。」

「あ、昌磨さまと知子さんの…。」

「俺らもう手紙のやり取りしなくていいもんね。」

そっか。私達は結局数回しかお手紙を交換出来なかったけど、フェイさんにはまだまだお仕事があるんだ。

「頂いたお手紙、一生の宝物にしますね。」

「あ、それ俺も。」

へへっと笑って、またキスを交わす。
もうすっかり新婚夫婦のようでむずむずするけど、幸せだから構わない。





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