氷の国8

【お城便り】5　★ ページ49

「まさかの結婚に皆驚いていますよ。」

「(笑)」

このタイミングのインタビューだ、これは避けては通れないかもしれない。

昨日、実際に国民の声を幾つか聞いた中で、佳菜のイメージが良すぎるが故のフォローを何かした方がいいし、まだ俺の口から結婚の説明らしいことをしていないのもちょっと気になっていた。

「正室の佳菜子さまがいらっしゃいますし、そもそも王子さまのご意志が感じられないご結婚に、国民が不安がっている部分も多いようなのですが…。」

遠回しなようで、なかなか確信をついてくる言い方だな。ここは本当にきちっと話さないと歪曲して記事にされかねない。

俺はうなずいてから、はっきりした口調で真っ直ぐ担当者を見つめた。

「うん。確かに皆のそう思う気持ちはわかるけど、僕としてはこの結婚を後ろ向きな感情でとらえたくないし、縁あって夫婦になれたこと嬉しく思ってます。」

そして穏やかに、落ち着いて話す。

「では側室さまを受け入れておられると？」

「勿論です。僕を始め、城の皆も同じ気持ちだと思ってます。」

もうAは俺の妻であり、氷の国の王族としての人生を歩んでる。

「そうですか。ちなみに正室さまと側室さまは…。」

「あ、仲良いですよ。一緒にかき氷食べたりしてますし。」

Aがかき氷好きかどうかは置いといて、佳菜の事が大好きだと言ってたし。
だけどこの担当者、かなり聞きにくいことまで切り込んでくるな。

ま、勝手に想像されて不仲説とか書かれるよりはましか。

「国も王族も平和と言うことですね。」

「そうそう、平和が一番！」

ぐっと拳を握ってガッツポーズをしておく。

「分かりました。王子さまへのインタビューは以上にいたします。では今月のお城のリンクの開放日を教えて戴きたいのですが…。」

「それは私の方から…」

まっちーがすかさず間に入ってくれる。
ということは俺の出番はここまでかな。

「じゃあ僕はこれで。」

スケートの話をしていると滑りたくなっちゃった。

「ありがとうございました。また半年後お願いします。」

頭を下げられたのを見届けて、さっさと来賓の間を後にした。





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