氷の国8

【仲良し】3　★ ページ26

馬車が到着して、クラブの方々に熱烈な歓迎を受けた俺達は、佳菜と二人用意された部屋で準備をする。
公務とはいえ練習着を着るなんて、なんだか変な感じだ。

「あれ、そのゆづが首にしてるの何？」

先に着替え終わった佳菜が俺の首を指差した。
その先にあるものは、先日Aがくれたネックウォーマーだ。

「いいだろ。可愛い妻からのプレゼントだし。」

「それ佳菜が可愛くないみたいに聞こえるー。」

口を尖らせて文句を言われる。
今のはちょっと言い方が悪かったか。

「Aが俺にってくれたの。練習の時とかに使ってる。」

今日みたいにずっと身体を動かせないような日にはとても役に立つ。

「いいなー。佳菜も欲しい。」

「それは俺からは何とも言えないけど。」

みんながこれと同じの持ってたら特別感がなくなっちゃうしな。
Aが俺だけのために作ってくれた物だから。

ふふ。やべぇ、顔がにやける。

「リア充だね〜。にやにやしちゃってさ。」

「えへへ。」

佳菜にあまり見られないようにネックウォーマーでゆるんだ口許を隠す俺。

「Aは本当に女の子っぽいよね。やっぱスポーツやってた人間としては、そういう心の余裕が羨ましいな。」

佳菜が過去の自分とAを比べているようだ。

「勝つことばっか考える生活だもんな。だからこそスケートに無縁のAに癒されるのかもしんねー。」

ほっと一息つきたい時に、隣にいてくれる安心感。今はシーズン中じゃないけど、大会が近づくとスケート一色になっちゃうから、身も心もピリピリしてしまう。

「また一緒にかき氷食べたいな…。ねぇゆづ。」

「うん…。え！」

つい返事をしてしまったけど、そんな気みじんもない俺は、またあの冷たい感覚を思い出して身震いしてしまった。





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