氷の国8

【白狐】2　☆ ページ17

「あ、お手紙！」

昨日私が結んだのとは雰囲気が違うから、これはきっとゆづ王子からだ！

私は急いで膝まずき、焦らずゆっくり手紙をほどく。
そして一刻も早く読みたい気持ちを抑えつつ、まずはフェイさんにお礼を言った。

「ありがとうございます…フェイさん。」

そして、また今夜もお願いしますね。と伝えると、フェイさんがまた羽ばたいて元のくぼみに戻って行く。

やっぱり朝は眠いのかな。
前にコウモリの時はあまり寒くないって言ってたけど、今は食料もまだまだあるし、とりあえず心配いらないかな。

見つかると危険なので、あまりここに長居するのはやめておこう。
それより早速ゆづ王子からの手紙を部屋に帰って読もうと、しっかり手に持ってご機嫌で扉を開けたら…。

「Aさま？」

廊下立っていた真凜とばったり出会って心臓が跳ねる。
私は咄嗟に持っていた手紙をポケットに入れた。

「ま、真凜！」

いつの間に！

「朝食の準備が出来たので呼びに来たんですけど…こんな所で何してるんですか？」

私のすぐ後ろにある扉に気付いた真凜が、もちろん中を覗こうとする。

「え！いや…この部屋何かなーって思って…。」

「ふーん、もう一つお部屋があったんですね。」

興味深く部屋を見ながら一歩進む真凜。
まずい、中にはフェイさんがいるのに見つかったら大変だ！

「物置部屋だったの！埃っぽいから入らない方がいいよ！」

それを必死に止めようと、私は身体を張って真凜を阻止する。

「そうなんですか。じゃあ一緒に下へ降りましょ。」

すぐにフェイさんの部屋に入るのをあきらめてくれたのは良いけど、にこやかに一階へと誘われて一瞬悩む。
だって私のポケットにはとても楽しみにしていたゆづ王子からのお手紙が…。

「すぐじゃなきゃだめ…？」

せめてこれを読んでからじゃ…。

「温かいスープが冷めますし、もうみんな揃ってますよ？」

……。
そんな風に言われたら降りない訳にはいかない。

「うん…行く。」

仕方がない。ゆづ王子のお手紙はしばらくおあずけだ…。




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