【出発】2 ★ ページ2
「あ、あったかい。」
それにマフラーより長い部分が邪魔にならなくていい。
「本当は花火大会の時に渡そうと思っていたのですが…。」
Aがうつむきがちに教えてくれる。
「あ…。」
結局一緒に見ることができなかった花火大会。
間の悪さのおかげで散々な一日になったんだった…。
「もしよかったら…。」
A、こんなの用意してくれてたんだ。なのに俺は無良くんとAの仲を疑ったりして…。
「ありがとう…。すっげー嬉しい。」
首のマフラー(の様なもの)にすりすりしながら、こういう瞬間にも幸せを噛み締めてしまう。
だけど明日になればこんな穏やかな気持ちともしばらくさよならだ。
「ゆづさん…?」
突然襲ってきた寂しさを紛らわせるために、俺はAをぎゅっと抱きしめる。
「A…。」
そして、このまま時が止まればいいのに…。と切に願ったのだった。
次の日の朝。
ついにAの出発の時がきた。
晴天に恵まれてはいるものの、やっぱり寒いので俺は早速Aにもらったマフラー…いや、ネックウォーマーと言うべきか…をかぶって場を取り仕切っている。
片道約半日の距離だ。早めに出ないと日没までに帰ってこれないので早朝から慌ただしく最終準備に追われているのだが…。
「A、忘れ物ない?」
もう昨日昌磨を見送った正門に来ているというのにこんなこと言うのもどうかと思ったけど、つい尋ねてしまう。
「はい、所持品は限られていますので…。」
積み荷は必要最低限しかない中、あの後俺は強引に裁縫セットを持たせた。
絶対に暇なのは目に見えてるから。
だけど心配だ…。
これから一週間、北の塔で過ごすAが。
あんな寒い場所にか弱い女の子を閉じ込めるなんて…。しかも王族で側室なのに。
「あー…俺のバカ。」
今更悔いても仕方ないけど、こうなった以上、出来る根回しは全部やっておきたい。
…そうだ、ちょっとフェイと連絡をとっておこう。
向こうに着いたとき、いないとか洒落になんねーから。
俺は心を集中させて、声に出さずにフェイに呼び掛けた。
177人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿(プロフ) - yukiさん» 本当ですか?!うれしいです!!ひとつ、里帰りする話でも書きたいなーと思ったのですが、すんごい長くなりそうで今だ執筆に至っておりません(笑)ファンタジーは設定を気軽に無視できるので、書いてて楽しいです! (2022年1月1日 8時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - このシリーズが、大好きです。番外編とかあったら読みたいです。 (2021年12月30日 23時) (レス) id: e391a6e98e (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 私もリアルタイムで見てました\(^o^)/ノーミスしてさらにその上の事をしないと上位にはいけませんね。ジャンプを後半に持ってきたり、繋ぎも大事何だなーと思いました。でもやっぱり羽生さんは別格だ(笑) (2017年12月24日 21時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - 女子フリー、みんなの頑張りに涙が滲みました。バンクーバー五輪の代表選考で中野友加里さんとあっこちゃんとの勝負を思い出しました。うう〜、本当に2枠しかないの?辛いですね〜。2位の2枠目は坂本さんが優位かな、とは思います。さっとん、本当におめでとう!! (2017年12月23日 23時) (レス) id: e2f297e7a8 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 羽生さん。今年の運勢、健康面あまり良くないんですよね。来年頑張って欲しいですね(・∀・)全日本はたぶん…チラ見かな(笑)女子は気になりますね!!狐さんの正体、かなり先になりそう?! (2017年12月21日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鹿 | 作成日時:2017年11月18日 0時