【城下にて】8 ★ ページ44
食事を終えて城に帰った俺達は、もちろん同じ部屋に戻る。
数日前から、夜だけは一緒に過ごしているのだ。
暖炉に火を入れたら、二人の空間が徐々に暖かくなってくる。
「A、疲れたでしょ。先にお風呂入っておいでよ。」
どちらの部屋にも備え付けてある浴場。今日は俺の部屋のを使ってもらうつもりで声をかけたのだけど…。
「はい。では失礼します。」
そう言って自分の部屋へ続く方の扉へ向かうA。
おいおい。
「いやさ、俺の部屋のお風呂使っていいから。」
「え、でも着替えがお部屋にありますし、戻って入ってきますけど…。」
…そっか、生活道具一式向こうなのか。女の子だし、お風呂から上がっても色々あるのかなと想像する。
「あー…、じゃあまた後で来てね。」
「はい。」
Aを引き止める充分な理由が見つからず、結局そのままぱたんと閉じられる木の扉。
今まで人の気配があったのに、一人になって部屋が一気に静かになってしまった。
そしてとりあえずソファーに座った俺はふと今の状況を頭の中で整理する。
普通、夫婦なら一緒に住むよな…。俺は王族だから別々で、それが当たり前だと思ってたけど、これは特に決められている事でもなかったはず。
隣同士不自由はないといえばないけど、それって寂しくないか?
奇しくもAは明後日から、北の塔で一週間の謹慎生活が始まる。
その間Aの部屋は誰もいなくなるから…。
「やっちゃうか…。」
突然頭の中に降って湧いた一つのアイデア。
むしろもう決定事項として進めるように、明日まっちーに指示しておこうと結論付ける。
どうせならAに内緒にして、帰ったらびっくりさせるか。
とりあえずはAがお風呂から上がってここへ来るまでに、俺も汗を流しておくことにする。
「楽しみだ。」
俺はソファーから勢いよく立ち上がってバスルームへ向かう。
そして今日が、Aが北の塔へ行く前の限られた二人の夜だと自覚して、大切に過ごそうと思っていた。
.
153人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ど素人ど底辺歌い手のつくよみ(プロフ) - すみません、ページ数も書くべきでした。 …忘れてしまいました、すみません。 (2018年2月27日 18時) (レス) id: e1bb019e02 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ど素人ど底辺歌い手のつくよみさん» 誤植かな?どこか教えていただけると助かります^^ (2018年2月27日 16時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
ど素人ど底辺歌い手のつくよみ(プロフ) - されど名前に、でも、はいりませんよ。 (2018年2月27日 6時) (レス) id: e1bb019e02 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» おめでとうございます!先生かあっこちゃんか、はたまた真央ちゃんか迷ったのですが、年上の感じが出したかったので先生にしました!次は誰が出てくるかなぁ〜(*^_^*) (2017年11月16日 15時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - suzuranさん» 今季のエキシビションは何なの!全日本エキシまで待つの?でも出場出来なかったらオリンピックまで幻やでぇ(笑)書くことでロスを癒すテクニックを身に付けはじめています(笑) (2017年11月16日 15時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鹿 | 作成日時:2017年11月3日 21時