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【守りたい】7 ☆ ページ30

「私…いつか夢から覚めるんじゃないでしょうか。」

こんな幸せ、一生続く訳がない。
しかもお風呂上がりのお姿をこんな間近でなんて…。

「どしたの。今日色々ありすぎておかしくなっちゃった?」

冗談で言われているのは分かっているのに、そうかもしれないと思ってしまうほど、今の私はパニクっている。

「ほ、ほわぁ〜…。」

「顔が赤い。」

熱でもあるの?と左手で私のおでこに触れた瞬間、ふとゆづ王子の腕にある4つの牙の跡が目についた。

「あ…。」

失礼ながらも、咄嗟に手にとってまじまじと見てしまう。

「仕事中は長袖で過ごすから。大丈夫、誰にもばれないよ。」

察したように穏やかにおっしゃるゆづ王子だけど、今はしっかり半袖で、その痛々しい傷がさらされている。
私はさっきまでの邪な妄想を頭から追い払ってゆづ王子に尋ねた。

「こんな契約しなくったって、ゆづ王子は絶対王者なのに…。」

どうしてですか?と、つい事の真意を問いただしてしまう。
するとゆづ王子がふっと笑って…。

「Aの全てを守りたいから。」

え…私のため…?
交易のためにここへ連れてこられたただの側室なのに?

いや、ゆづ王子はそういうお方なのだ。
側室でも正室でも。きっと誰にでも同じように接することのできる人…。

私はいてもたってもいられず、そのままゆづ王子に抱きついた。
その瞬間、流れる一筋の涙を拭おうともせず、ただ力の限りに。

「ゆづさん…。」

そして声にならない声で愛しい夫の名を呼ぶ。

「A…泣かないで。本当にこんなの、大したことないよ?」

そんな私の髪を優しく撫でてくれるゆづ王子に、どうやってこの気持ちを表せばいいのか分からなくなる。

それくらい、心からの信頼と愛情を、この人に捧げなければと切に思う。

「私…どうすれば王子さまに、気持ちをお返しできますか…。」

未だかつて、こんな感情の涙なんて流したことはない気がする。
人のために…いや、夫のために、命さえ惜しくはないと思うほどに。

するとゆづ王子が少し考えて、私の耳元で消え去りそうな声でこう言った。

「側にいてさえくれればいい…。」

「……。」

その一言が重く切なく私の心に響く。

王子さまは、時に孤独なのだろうか。
こんな私でも精神的な支えになれるだろうか。

私は何度もうなずきながら、ゆづ王子の背中をそっと撫で続けた。






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ど素人ど底辺歌い手のつくよみ(プロフ) - すみません、ページ数も書くべきでした。 …忘れてしまいました、すみません。 (2018年2月27日 18時) (レス) id: e1bb019e02 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ど素人ど底辺歌い手のつくよみさん» 誤植かな?どこか教えていただけると助かります^^ (2018年2月27日 16時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
ど素人ど底辺歌い手のつくよみ(プロフ) - されど名前に、でも、はいりませんよ。 (2018年2月27日 6時) (レス) id: e1bb019e02 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» おめでとうございます!先生かあっこちゃんか、はたまた真央ちゃんか迷ったのですが、年上の感じが出したかったので先生にしました!次は誰が出てくるかなぁ〜(*^_^*) (2017年11月16日 15時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - suzuranさん» 今季のエキシビションは何なの!全日本エキシまで待つの?でも出場出来なかったらオリンピックまで幻やでぇ(笑)書くことでロスを癒すテクニックを身に付けはじめています(笑) (2017年11月16日 15時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2017年11月3日 21時

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