氷の国7

【問題】2　★ ページ2

「王子さま。少しよろしいですか。」

さっきから側でじっと話を聞いていたであろう大臣が俺に声をかけてくる。

「何？」

「バンパイアが人の血を吸わないということは調べがつきましたが、かといってこのまま何の咎めもなしに解放する訳にはまいりません。ましてや不法入国のような真似まで…。」

「うーん…。」

フェイが今、余計なことをカミングアウトしたばかりにまた問題が増えてしまった。
でも確かに、ここまで国を混乱させておいて何の罰も与えないのは利に反するか。

「え、嫌だよ！」

それを聞いたフェイが急に慌てだした。

「待って。大臣、その件に関しては少し時間をくれない？まだショーも終わったばかりで他国の者も多いし、結論はもうちょっと待って欲しい。」

客人が帰国してからでないと混乱するし、フェイだってもう逃げたりしないだろう。

「分かりました。あと非常に申し上げにくいのですが、御側室のAさまにも、バンパイア騒動の件に関して大きな罪がございます…。」

「え！A？！」

突然出てきた名前に驚く。

「結弦王子さまを差し置いてバンパイアの討伐の指揮をされたとか…。これは側室としてあるまじき行為かと。」

「……。」

まずい、そこを突っ込まれると言い訳のしようがない。
この大臣の言うことは正しくて、やっぱりあの場面では、まず第一に王子である俺に知らせなきゃならない事柄だったのだ。

いくらショーの真っ最中でも、俺は騎士団と共にバンパイア討伐の指揮をとるべきだったし、そうしなければならなかった。

「あの女の子に何の責任が？」

フェイも心配そうに俺を見る。
AはAなりに一生懸命だったのだろうけど…。これは俺の力でも無罪放免とはいかないかもしれない。

「それは…。」

「いかがなさいますか…。」

大臣からの再三の問いかけにため息が出る。
だけど今すぐ返事が出来るほど、Aの事を軽く扱えないのも事実だ。

「…それもフェイの件と一緒に考える。とりあえず明日臨時閣議を召集するから。」

先延ばしにするわけじゃないけど、大臣には今はこれで納得してもらうしかない。

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